2022年11月28日(月)

新しい〝付加価値〟最前線

2022年10月29日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

1961年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同理工学研究科修了。大手メーカーにて商品開発・企画を担当後、独立。現在、商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。

 数年前から、エアコンの形がすっかり変わってしまった。壁の設置面積に対し、前にせり出し過ぎてしまっていて「怖い」と思うくらいだ。理由は、省エネ。エアコンで風を作る円筒形ファンの周りに、最大効率を求めて、熱交換器を巻き付けるようするからだ。この円筒システムをパッケージするため、薄くできないのだ。

冷蔵庫は幅で選ぶ

 これに似た事情を持つ家電が冷蔵庫だ。注文住宅などで台所の設計に関わった人は分かると思うが、台所の設計で、家電をどこに置いて、どうやって使うのは重要なポイントになる。中でも巨大な冷蔵庫の設置は悩ましい。冷蔵庫は、使う時に扉を開けるスペース、専用の電源、熱放射スペースなどを確保する必要がある。冷蔵庫を置く場所を広く取ると、将来、より大型の冷蔵庫を置くことができるが、日本の住宅の場合、ギリギリの幅で設計されるのが常だ。

 新しい冷蔵を買う場合は、この幅が許容限度となる。多くの場合、放熱スペースが左右合わせて10センチあるので、60~75センチが冷蔵庫の「ゴールデン・ゾーン」となる。

 そして、幅により片開きか、両開き(フレンチドア)に分けられる。幅が広いタイプで片開きを採用すると、開くスペースを取るため、使いにくくなる。一方、フレンチタイプで統一できないかというと、幅が狭い場合、ドアポケットの容量が少なくなる。

これに大容量ニーズが加わわると

 共働きが当たり前になった現代、日本人は超忙しい。家事をする余裕もなくなる。そうなると「まとめて」したいというニーズが高まる。典型的なのは洗濯機だ。縦型洗濯機大型化しており、12キロが当たり前になってきた。

 これに似たのが冷蔵庫だ。「スーパーに行かない=買いだめ」、「自炊=作り置き」というニーズが高まり、もともとお弁当のおかずなどの冷凍食品でパンパンだった冷凍室は超満杯。こうなると「大容量が欲しい」となる。

 しかし幅を変えることはできない。となると、高さと奥行きで容量を稼ぐことになる。今では、横幅より、奥行きが長いのが当たり前になった。

 その結果、使い勝手が悪い冷蔵庫が増えた。というのも、棚は浅いと、すぐ取り出せて使えるが、奥行きが深くなり、二段構えにすると、後ろの食材になかなか目が届かない。その上、取り出しにくい。出しやすいのは目の高さまでだ。人間が視覚情報に頼っているためだ。要するに、置ける&大容量というニーズを満たした冷蔵庫は、理論的には正しいが、使いにくい冷蔵庫になってしまっているということだ。

ツインバードの挑戦

 ツインバード工業からツインバードと名前を変えた、燕三条市に本社を持つ、従業員 300人の小規模家電メーカーが、中型冷蔵庫市場に名乗りを上げた。

 ツインバードは、冷凍技術に定評がある。スターリングクーラーの量産技術だ。スターリングクーラーは運動エネルギーを熱エネルギーに直接変えるため、エネルギー効率が素晴らしくいい。ただ、一般的ではない。自動車でいうと、マツダだけがものにしたロータリーエンジンに近いかもしれない。小型、軽量、高出力のロータリーエンジンはスポーツカーとの相性が抜群だ。

 スターリングクーラーも似たところがあり、ニーズがピッタリはまったのが、医療、宇宙開発だ。新型コロナワクチンの運搬用冷凍ボックスにも使われている。

 小型家電が多いツインバードと大きな冷蔵庫は、すぐに結びつくものではないが、秘めた実力はある。そのツインバードが、矛盾に満ちた冷蔵庫分野に乗り込んだわけだ。

左)背伸びせず使える冷蔵庫 HR-E935W(354L/72L)、右)中身が見える冷蔵庫 HR-E135B(354L/72L) (定格内容量 / 冷凍室内容量)

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