なぜ、大手メーカーではできないのか?
この課題は、元々わかってた課題だ。それでは、なぜ、大手メーカーは作れなかったのか? 理由は2つある。1つは、今のラインナップが幅で決められていることだ。その幅の中で一番容量が大きいのがトップというわけだ。
冷蔵庫は4大家電の一つ。4大家電は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、テレビのこと。掃除機などは失敗が許されるが、この4つで失敗すると、会社、事業部が傾く。いい例がテレビだ。「地デジ化」で2011年に3年分売ったメーカーが、翌2012年はボロボロになった。
だから、これら4大家電は、なかなか冒険ができないのだ。その上、日本市場はちょっとでも荷動きが悪いと、流通が値を下げるので、価格維持のためにも、新モデルを投入する必要がある。そうなると短期開発が当たり前、他社と似たモデルが店先に溢れることになる。それでも、荷動きがある限り止めない。
2つめは、サイズを変えるとコストがかかるということだ。冷蔵庫は、多くの棚、引き出しで構成されている。外のサイズを変えると、中のサイズも変わる。つまり、これらを成型する金型を全部新調する必要がある。今まであるパーツが利用できないとなると、薄利になる。
「今ある利益を0にしても、すべき価値がある」という、スティーブ・ジョブス的なカリスマがないと、それを実現することができない。大手メーカーでは予算もつくので、確かに多方面開発はできる。しかし、本流、根幹に手を出すとなるとものすごく大変なのだ。
ツインバードはスリム化して、リブランディングに挑戦中
「いいものを出したい」「自分の作ったもので世の中を幸せにしたい」。全メーカーの願いだろう。しかし、よいものを世に出すには、いろいろな痛みを伴う。痛みに耐えて初めて変革できるということだ。
ツインバードは、より良いものを作るための、一つの手段としてリブランディングをした。テレビCMを流せる会社でしたらまだしも、中小企業の声はなかなか通らない。しかし、それを常にアピールしてくれるものがある。自社製品だ。冷蔵庫などは365日24時間使う。使いやすさは、その分確実に、「こいつはいいなぁ」ということを感じ取れる。リブランディングは良い製品があってこその話なのだ。
ツインバードは、小型家電を主に作っている。これはカタログ通販などにも使われ、大きな収入源となっている。今回、リブランディングに合わないモデルは、ラインナップから外したそうだ。売上は下がるが、わかりやすい。外から見ても、わかりやすい。社内的もスッキリしたそうだ。本気度が伝わり、社内も熱気を帯びてくる。
そして「初めての中型」冷蔵庫。初めてだから、全部作らなければならない。幅から入ると、大手メーカーに立ち向かうことは困難だ。大手メーカーが見ないようにしているところ、手が回らないところ、コロナ禍で大容量冷蔵庫のニーズは高まっているものの、老人の1人、2人世帯も多くなっている。そこにリソースを集中したわけだ。