新幹線のメンテナンス業務を取材するため、大井車両基地(東京都品川区)を訪ねた。東海道新幹線の車両は走行距離や期間に応じて4種類のメンテナンスが行われている。
①仕業検査:おおむね2日おきに行われ、パンタグラフ、台車、ブレーキなど運転に必要不可欠な装置の状態確認と動作確認を行う。消耗品の交換も随時行う。
②交番検査:45日以内または走行距離6万キロ・メートル以内に行われ、パンタグラフ、走行装置、ブレーキ装置などの状態や機能、電気部品の絶縁抵抗などを検査する。
③台車検査:20カ月以内または走行距離80万キロ・メートル以内に行われ、車両から台車を取り外し、部品ごとに検査を行う。
④全般検査:40カ月以内または走行距離160万キロ・メートル以内に行われ、車両全般の機器類を取り外し、細部まで検査を行う。
これらの検査はJR東海のほか、同グループ会社の「新幹線エンジニアリング(SEK)」も担っている。SEKは大井車両基地で仕業検査と交番検査の一部を担当する。
仕業検査は営業運転中の合間や終了後の夜間など24時間絶え間なく行われ、SEKは主に夜間の検査を担当する。1編成あたりの検査に要する時間は約40分。時間はたっぷりあるようでも、16両の車両を検査するので、実際はタイトだ。お盆や年末年始など運行する列車の本数が増える時期は特に大変である。「1日に検査する車両の本数は普段10本程度ですが、忙しい時期は13本にもなる」と、仕業検査を担当する根本幸雄さん(30歳)は話す。
車両を留置して検査や整備を行う検修庫には車両が入れ替わりで次々と入ってくる。次の業務のために移動しようとしたら手前に別の車両が入ってきて、停車するまで数分待たされることもある。「でも、焦りは禁物」と根本さん。
「作業内容によっては、自分が検査・整備を終えた後に誰も確認しないケースもあります。どんなに時間がなくても、自分が『最後の砦』のつもりで、確実にできているか、何度も何度も確認します。常に120%の気持ちです」