国と都が10月23日に東京メトロ株を上場し、両者が保有する株式の50%を放出する。2002年に成立した東京地下鉄株式会社法は「できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずる」と完全民営化を定めているが、20年以上を経て今回ようやく50%の株式を売却することになった。
ここまで時間がかかったのは、都がメトロを所有し、後発の都営地下鉄を一体化させたかったためだ。今回の上場で、都営とメトロの合併はさらに遠のいた。これは利用者にとって歓迎すべき結果と言える。
パリやニューヨークと異なる発展を遂げた東京の地下鉄
大正時代にできた日本で初めての地下鉄(銀座線)は、東京地下鉄道株式会社と東京高速鉄道株式会社によって民営で建設・運行されていた。ところが1930年代の世界的大不況の中で経営難に陥り、政府によって1941年、帝都高速度交通営団(通称営団地下鉄)が設立され、経営を引き継いだ。
営団地下鉄は戦後、政府と都の資金によって丸ノ内線、日比谷線をはじめ次々と地下鉄を建設・運行していった。しかし急速な経済成長と人口膨張によって交通需要は増大し続け、都は営団地下鉄とは別に都営地下鉄を設立。1964年東京オリンピック(五輪)のときに部分開業した都営浅草線をはじめ三田線、新宿線、大江戸線と次々に建設・運行するに至った。
国土交通省『令和元年度 鉄道統計年報』によると、日本の鉄道会社で年間輸送人員1位はJR東日本の65億人余、2位は東京メトロで27億人余、5位は都営地下鉄で10億人余となっている。
東京の地下鉄輸送人員はメトロと都営を合わせると37億人余となり、ニューヨークの17億人余、パリの15億人余、ロンドンの13億人余をはるかに凌いで、圧倒的な輸送力を持っている。
ニューヨーク、パリ、ロンドンとも地下鉄は民営ではなく完全に公営である。世界の大都市に比べあとから地下鉄をつくり始めた東京だが、最も早く成熟段階に達し、世界に先駆けて民営化方針を決定したのが1995年の閣議決定「特殊法人の整理合理化について」である。
この方針は2001年の閣議決定「特殊法人等整理合理化計画」で具体化され、翌2002年に東京地下鉄株式会社法が成立し帝都高速度交通営団は廃止され東京メトロは株式会社となった。会社発足当初の持分割合は国が53.4%、都が46.6%である。