2023年2月2日(木)

都市vs地方 

2022年12月8日

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青山 佾 (あおやま・やすし)

明治大学名誉教授

1943年生まれ。67年東京都庁経済局に入庁。高齢福祉部長、計画部長、政策報道室理事を歴任。99~2003年に石原慎太郎知事のもとで副知事。専門は自治体政策、都市政策、危機管理、日本史人物伝。『東京都知事列伝 巨大自治体のトップは、何を創り、壊してきたのか』(2020年、時事通信出版局)、『世界の街角から東京を考える』(2014年、藤原書店)など。

 東京都の小池百合子知事は2022年11月25日の記者会見で、臨海地下鉄(都心部・臨海地域地下鉄)の事業計画案を発表した。

 この地下鉄は東京駅を出発し、外堀通りの地下を通って数寄屋橋付近で曲がって築地市場跡地を経由、勝どきや五輪選手村跡地である晴海フラッグ横を通ってから平行する環状2号線に移って豊洲市場を経由し、有明の東京ビッグサイトに至る。 駅名は仮称だが、小池知事は「東京」「新銀座」「新築地」「勝どき」「晴海」「豊洲市場」「有明・東京ビッグサイト」の7駅を示した。

(Korekore/gettyimages)

 今回の発表では「まず臨海地下鉄の単独整備を検討していく」としているが、つくばエクスプレスが秋葉原から延伸して東京駅前でこの地下鉄に接続することができる。また有明・東京ビッグサイトからはりんかい線に乗り入れることが考えられる。りんかい線は元々、国鉄分割民営化の時に都が旧国鉄の貨物鉄道を買い取った路線が含まれていて、結果的に臨海地下鉄はJR東日本が計画している羽田空港アクセス線と接続することができる。

 上に述べたこれらの計画や構想は長い年月にわたって国や都の審議会や地元各区の計画等で議論され公表されてきた。しかし従来は発表されても特に世間の注目を浴びることはなかった。

 今回は小池知事が自ら発表することを知事会見前日の朝刊に新聞一紙がスクープしたこともあり、目立った。その新聞のオンライン投稿欄には、この計画に対する賛否両論が多数寄せられた。この路線に一般の関心が高いことを意味しているだろう。

 この臨海地下鉄、実施すべきなのか。また、実施するならどのように行うべきなのか。賛否の意見を検証しながら考えてみたい。

人口減少時代に新路線が必要か

 インターネットで散見された反対論の代表格に、「人口減少時代に新しい地下鉄路線をつくるのはいかがなものか」という指摘がある。

 一般的にはその通りなのだが、都市においては、経済や社会の変化に伴って人々の移動の質や量が変わっていく。鉄道機能が不要もしくニーズが減少していく地域もあれば反対に新たな鉄道機能を切実に必要とする地域もある。

 東京都の人口が2000年にピークに達してその後は減少すると公式に予測されていた1990年代に、都は2000年12月に開通する大江戸線をつくり続けた。この時も人口減少時代に長大路線をつくるのかという強い批判はあった。

 臨海地下鉄はそれ自体約6キロメートルにすぎないが、大江戸線は環状部だけで30キロメートル近い路線だった。1999年に都知事に就任した石原慎太郎氏から、当時副知事だった筆者は「君たちはつくるときは大勢乗ると言って過大な計画をつくるが、実際にはそれだけ乗った試しがない」と指弾された覚えがある。

 しかし、その大江戸線は全線開業時には1日約20万人だった乗客が約20年後(コロナ禍以前)には1日約100万人近くに増えている。都心一帯を走る環状線だから各私鉄・地下鉄・JR各路線からの乗り換えに利用する客が多い。東京も成熟社会に入り、通勤だけでなく文化芸術・スポーツなど多目的の移動が増加して、乗り換えの仕方も質的に多様化・複雑化したのである。


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