2023年1月30日(月)

都市vs地方 

2022年12月6日

»著者プロフィール
著者
閉じる

佐藤泰裕 (さとう・やすひろ)

東京大学大学院経済学研究科教授

大分県別府市出身。1996年東京大学経済学部卒業。2002年東京大学大学院経済学研究科博士(経済学)。名古屋大学大学院環境学研究科准教授、大阪大学大学院経済学研究科准教授等を経て18年より現職。

 新型コロナウイルス禍により東京離れが叫ばれたが、ふたを開けてみれば、2020年も21年も東京都は転入超過の状態が続き、近隣の埼玉、千葉、神奈川県も転入超過が続いている。22年は東京への転入超過が21年よりも大幅に増える見通しで、人口移動の流れとしてはコロナ前に戻りつつあるように見える。

(ndcityscape/gettyimages)

 これを確認するために、図1は東京圏を構成する東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の転入超過数(日本人移動者)を、18年から22年まで描いている。

 ここでは、外国人の入国が制限された影響をできるだけ除くために外国人も含む転入超過数ではなく、日本人移動者のみをみている。また、22年の数字は執筆時に利用可能であった1月から10月までの数字の合計である。

 これをみると、新型コロナ禍の影響で、東京都の転入超過数は20、21年と大きく落ち込み、周囲の三県の転入超過数が増えているが、22年にはコロナ前に戻るような動きを見せている。仮に21年の11、12月の数字を22年11、12月にそのまま当てはめても、東京都への転入超過数が21年より大幅に増えることは変わらず、埼玉、千葉、神奈川県への転入超過数は21年より若干低い程度の水準になる。

 こうした変化は、東京を取り巻く状況がコロナ前に戻りつつあることを示唆する。一方で、新型コロナ禍は生活様式や働き方に大きく影響し、その中には今後も影響が残りそうなものも確かに存在する。

 その一つが、zoomやWebexといったリモートコミュニケーションツールのかつてない普及であろう。一時期は友人と会うのもはばかられ、在宅勤務が推奨されたため、多くの人がオンラインでのコミュニケーションに頼った。最近はこうした対面交流に対する制限も緩くなったが、コミュニケーションの有力な手段の一つとしてリモートコミュニケーションツールは定着したと言えよう。

 伝統的に、情報通信技術の発展は遠方にいる人とのコミュニケーションを容易にし、われわれの生活に大きな影響を与えてきた。固定電話から携帯電話、インターネットにSkype、zoomやWebexなどのオンライン会議ソフトの普及まで、今や多種多様なリモートコミュニケーションツールが利用可能である。

 こうした新たなツールが普及するたびに、もはや実際の距離は重要ではない、もはや大都市のように限られた場所に多くの人が集まって暮らす必要はない、といった言説が散見された。ところが、いまだに東京には多くの人が暮らし、新型コロナ感染症のような未知の感染症が蔓延し、人口密集地に住むことの危険性が高くなっても、東京圏からの大きな人口流出は観察されない。

 東京およびその周辺に人が集まり続けていることの是非は価値観や立場により異なるであろうが、集まる力がいまだに強く働き続けていて、リモートコミュニケーションツールの普及によって集まる必要がなくなったとはとても言えない状態にあることは確かであろう。

 では、リモートコミュニケーションツールは大都市に何の影響も及ぼさないのであろうか。本稿では、リモートコミュニケーションツールが都市を形成する要因とどのように関係し、都市にどのように影響しうるかを整理してみたい。


新着記事

»もっと見る