2022年6月25日(土)

都市vs地方 

2022年6月5日

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佐藤泰裕 (さとう・やすひろ)

東京大学大学院経済学研究科教授

大分県別府市出身。1996年東京大学経済学部卒業。2002年東京大学大学院経済学研究科博士(経済学)。名古屋大学大学院環境学研究科准教授、大阪大学大学院経済学研究科准教授等を経て18年より現職。

 近年、しばしば東京都への人口集中にみられる男女差がニュースで取り上げられてきた。例えば、NHKは「東京の人口 女性「転入超過」に 20代前半が3割近く占める」(2022年2月28日)と題して、過去1年の東京都への人口移動が、男性では転出超過に、女性では転入超過になったこと、そして、女性の東京都への転入数の約3割が20代前半であることを報じた。その背景には、ここ10年ほど東京都への女性の転入超過数が男性のそれを上回り続けいているという事実がある。

(monzenmachi/gettyimages)

 さらに過去に遡れば、男性の転入超過数の方が多かった時期もある。図1は総務省の住民基本台帳人口移動報告に記載されている東京都への転入超過数を男女別に描いたものである。

筆者作成、以下同 写真を拡大

 縦軸が転入超過数、横軸が年を表し、高度経済成長後の期間を対象にしている。第一次オイルショック後やバブル崩壊直後の時期は女性の転入超過が多いものの、バブル時期など男性の転入超過数の方が多い時期もある。2000年からの10年はほぼ同数だったところから、最近の10年間は女性の転入超過数が多い状態が続いている。

動きが顕著な20代から30代

 こうした移動の男女差が人口にどのようなインパクトを与えるのであろうか。それを見るために、東京都の人口における男女比を全国のそれと比較してみよう。住民基本台帳の21年1月1日現在の都道府県別年齢階級別男女人口を基にして、東京都と全国の男女比を求めてみると、図2のようになる。

 この図で、縦軸は男女比、横軸は年齢を表している。移住の意思決定をしない子供の時期は全国も東京都も男女の出生性比である1.05(男性:女性=1.05:1)前後である。全国では20代までこの傾向が続いて、死亡率の違いから30代から年齢が上がるにつれ男女比は単調に低くなる。

 これに対して、東京都では、20代前半に急落し、20代から30代前半にかけて全国よりも明確に低い値をとる。その後の年代では50代から60代にかけて東京都の男女比は全国よりも著しく高い値をとる。

 この図から、東京都の男女比は、特定の年齢層において全国の男女比と比べてかなり異なった傾向を示していることが分かる。図1の転入超過数の動きと比較すると、もし女性の東京志向が20代で顕著ならば、図2の20代から30代での男女比の動きと整合的である。

 この場合、ここ10年の女性の東京志向が、20代から30代にかけての東京都における男女比を左右するほどの規模になっており、それが注目を集める一因となっている蓋然性が増す。本稿では、10年続くこの傾向について考察してみたい。

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