2024年12月9日(月)

都市vs地方 

2021年12月7日

 コロナ禍をきっかけに、東京のような大都市から地方への移住がさまざまな形のニュースで取り上げられている。このことは、第二次大戦後一貫して都市化が進み、特に、バブル崩壊後のほんの一時期を除いて東京圏が拡大し続けてきたことの裏返しでもある。

 こうしたニュースにおける視点は、多くの場合、東京一極集中の解消につながる、地方にとってのチャンスとなる、といったもので、暗黙の裡に、「東京は人が多く集まりすぎている」、「地方は人が少なくなりすぎている」、という前提を置いているように思える。

(Takosan/gettyimages)

 こうした前提は正しいのであろうか。もちろん、東京で満員電車に乗っている人であれば、「人が多すぎる」と感じているであろうし、地方都市で中心商店街がシャッター通りになっているのを見た人であれば、「人が少なくなりすぎている」と感じるであろう。それは一面では正しいかもしれない。しかし、それで議論を終わりにして、皆が地方に散らばればよいと考えてよいのであろうか。

 東京に住んで、店が多くあって便利だと感じている人はいないのであろうか。また、地方では混雑や渋滞に巻き込まれることは皆無なのであろうか。こうした疑問に答えるためには、何を目指して、何を基準にして判断しているのか。そして、その判断が妥当なのか、もう少し視野を広げ考える必要があるように思われる。

 そこで、本稿では、都市と地方の関係を論ずるうえで、特に注意すべき点を2点挙げてみたい。

人口が減っても就業者は増えることも

 1点目は、2021年11月2日の、東北大学の吉田浩教授による「都市VS地方 今や「地域力」は人口では測れない」と関連する。吉田教授は、地域の活力を見るうえで、人口だけに注目するのは適切ではなく、高齢者が活躍できているか、地域コミュニティの存在といったことも考慮すべきであると説いた。

 この考えは非常に重要で、地域の活力といっても多様な面があり、それを測る指標も多様でありうる。画一的に人口に注目するのではなく、地域の活力として何に注目するのかに応じて、適切な指標を用いる必要がある。

 例えば、その地域にどれくらい経済活動の担い手がいるかという側面に注目するのであれば、人口はそれを測る指標としては物足りない。もちろん、一つの代理指標ではあるが、それよりも、働いている人の数である就業者数を用いた方が適切であろう。実際、地域における人口の変化と就業者数の変化は関係してはいるが、全く同じではない。


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