2024年2月21日(水)

都市vs地方 

2022年12月6日

テレワーク普及による新たな都市の形

 こうしたテレワークの普及で通勤負担が軽減されると、都市にどのような変化が生じるであろうか。米国のクレアモン・マケナ大学のデルベンサール教授らは、ロサンゼルス大都市圏について、テレワーク労働者の増加の効果についてシミュレーション分析を行った。

 ロサンゼルス大都市圏では12年から16年の間の平均的なテレワーク労働者比率は約3.7%であったが、20年には新型コロナ感染症蔓延の影響もあり、33%にまで上昇した。これが都市内の人口分布や企業分布、不動産価格におよぼす効果を抽出するために、12年から16年の平均的なロサンゼルス大都市圏の様子をシミュレートし、テレワーク比率を3.7%から33%に変化させる分析を行った。その結果、テレワークの普及により、労働者は郊外に、企業は都心に移動し、都市全体で不動産価格が平均的には低下することを示した。

 コロナ禍の日本についても人口移動の側面では似た動きが観察された。図1でみたように、テレワークが急速に普及した20、21年には相対的に東京圏の中心で人口が減り、郊外で人口が増えたのである。

 テレワークの普及と同時期に生じたこうした動きは先ほど紹介したロサンゼルス大都市圏についての研究結果と整合的である。もちろん、この変化がテレワークの普及によるものなのか、それとも新型コロナ感染症への不安によるものなのか、それとも他の要因によるものなのかは詳細な分析を行わなければ判然としない。しかし、少なくとも、テレワーク普及の効果が顕在化したと考えても矛盾しない状態であると言える。

 集積の経済と混雑の不経済への影響に鑑みると、リモートコミュニケーションツールの普及は、現状では、集積の経済との補完関係と混雑の不経済の低減効果により大都市への人口集中を更に促し、大都市内では都心近くに住む必要性を軽減して郊外化を促進する効果を持つと考えられる。近年の東京圏への転入超過数の変化を見ると、その効果がすでに顕在化しているとも考えられる。今後の日本の都市の変容を見極めるためにも、詳細な分析が期待される。

 
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