新型コロナウィルス感染症の蔓延とリモートワークの推進などの社会経済活動の変化が進む中で、地方移住が脚光を浴びている。こうした話題が取り上げられる際、東京一極集中の是正への期待が語られることも多い。
その背後には、「コロナ前は東京への一極集中が進んでいて、その東京一極集中は是正すべき問題である」ということが暗黙の裡に仮定されている。また、一極集中が問題視されるのは多くの場合東京である。しかし、日本の人口移動の様子をもう少し詳しく見てみると、一極集中は何も東京だけで生じているわけではない。
日本を全体、広域地域、都道府県とさまざまなレベルでみてみると、各レベルで一極集中が観察される。だとすると、それは問題にしなくてよいのであろうか。
本稿では、東京への一極集中が例外的な現象ではなく、地域区分を変えてみると各地域区分でも一極集中が生じていることを確認し、そうした集中が、どのような視点から見たときに、どのような条件下で問題になりうるのかを議論する。
さまざまなレベルの一極集中
まず、地域区分を変えてみて、一極集中の様子を確認してみよう。
例えば、日本を内閣府の「地域の経済2019」の地域区分を参考に10の広域地域に分割し、コロナ前の2019年の人口移動の様子をみると、日本全体では南関東への一極集中が進んでいることが確認できる。
図1は、各広域地域の転入超過数を、転出元の地域ごとに集計したものである。例えば、「北海道・東北へ」の棒グラフは全体的に負の値の領域に伸びている。これは北海道・東北では転出超過となっていることを示している。
さらに、その棒グラフは色によって区分されており、それぞれの色が特定の地域との間の転入超過数を示している。北海道・東北においては黄色の領域が大きくなっているので、南関東(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)との間で大幅な転出超過になっているのである。
このグラフから、南関東は全体として大幅な転入超過となっており、19年には日本全体でみると東京への一極集中が進んでいたことを示している。