2022年10月3日(月)

都市vs地方 

2022年1月21日

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岡田 豊 (おかだ・ゆたか)

みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部経済調査チーム上席主任研究員

1967年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、現在のみずほ総合研究所の前身である富士総合研究所に入社。「第2期『まち・ひと・しごと創生総合戦略』の策定に向けた KPI 検討会」委員などを兼任。

 働く人の賃金の向上。岸田文雄政権が「新しい資本主義」の下で、推し進めている政策だ。これまで、人材や設備への投資を怠り、価格転嫁せずに安売りを続け、結果として従業員の給与が上昇しないといった日本企業が抱える課題を解決するためには良い流れであろう。ただし、業績の良い大企業を中心に賃上げが進むのであれば、そのような企業の立地が多い東京圏などの大都市圏に人が集まることになってしまう。「地域活性化」を考えると、一概に高い賃金の仕事を増やすことが唯一の解決策という訳ではないかもしれない。

(kanetomo883/gettyimages)

アベノミクスで働く場は増えた

 アベノミクスをはじめとした景気浮揚策により、ここ数年で雇用環境は改善している。2021年11月の全国の有効求人倍率(季節調整値)は、1.15倍。13年11月から、1倍超を保ち続けている。有効求人数(実数)を見ても、リーマン・ショック時の09年度平均が126万人だったところから、右肩上がりに上昇し、コロナ前の19年度は266万人、コロナ禍の20年度も206万人となっている。

 都道府県別で見ても、有効求人倍率(季節調整値)は、新型コロナウイルスによる飲食店をはじめとするサービス業休業の影響を受けた沖縄県(0.74倍)、神奈川県(0.79倍)、千葉県(0.84倍)、兵庫県(0.89倍)、埼玉県(0.93倍)、滋賀県(0.99倍)を除く41都道府県で1倍を超えている。つまり、地方にも引き続き雇用が提供され続けている。 

 仕事があるからといって、地方に人が集まる訳ではなかったことは、現在でも地方で続く転出超過(転入より転出が多いこと)を見れば明らかだろう。地方圏の創意工夫により地域産業が活性化され魅力ある仕事が創出されることで、都市圏から地方圏への人の流れが生まれ、その結果、地方の人口減少と日本全体の人口減少の両方が緩和される、という国が掲げてきた地方創生の目的はいまだ道半ばである。働き盛りとなる25歳以上や出産・子育てを控えた20代や30代の家庭が魅力と感じるような年収500万以上の仕事を地方圏であまり作れていないのであろう。

いわゆる「老後2000万円問題」から考える

 地方創生のターゲットとしている若い世代の地方への移住があまり進展したとはいえないものの、今後増えていく高齢者の定住や呼び込みは地方によって重要である。

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