都市vs地方 

2021年12月30日

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吉田浩 (よしだ・ひろし)

東北大学大学院 経済学研究科教授

高齢経済社会研究センター長。1995年一橋大学大学院博士課程満期退学、97年東北大学大学院経済学研究科助教授、2007年より現職。会計検査院第9代特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員も歴任した。著書に『男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略』(河北新報出版センター)、『厚生労働統計で知る東日本大震災の実状』(統計研究会)など。

 このシリーズでは、進行する地方の高齢化問題を地方の生産力の観点から考えてきた。前々回「都市VS地方 今や「地域力」は人口だけでは測れない」では高齢者の就業、前回「中核地域の宮城と広島 出生率がこれだけ違うのはなぜ?」では女性の就業に焦点を当てた。いずれの話においても、地方における高齢就業者や女性就業者の活躍が地方の持続可能性に大きな影響を持ちうることを主張した。

 しかし、議論の焦点は地方そのものにあてられており、東京など中央部に及ぼす影響という視点は含まれていなかった。そこで今回は、東京圏(以下、東京都、埼玉県、神奈川県及び千葉県)にとって地方の持続可能性がどのような意味を持ちうるかについて考えることとする。

(gyro/gettyimages)

人口による地方の政治的重みづけ

 先ごろ11月30日に、総務省は2020年国勢調査の確定値を発表した。この国勢調査による都道府県人口に従って、衆議院小選挙区毎の人口の格差、すなわち国勢選挙における1票の格差を計算すると、最多の東京22区と最少の鳥取2区との間で2.096倍の開きがあった。

 そこで、違憲判決の目安とされる1票の格差2倍以上を是正するため、人口の多い東京圏などの定数が増やされ、逆に人口の少ない地方部の定数は減らされることとなる。正式には衆院議員選挙区画定審議会が22年6月までに新たな区割り案を首相に勧告する。

 現段階での試算では、東京で現行の定数25から30へと定数が5増えるのをはじめ、神奈川でプラス2、埼玉、千葉、愛知でそれぞれプラス1の計10増となるとみられている。逆に、地方の宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎でいずれもマイナス1の計10減となるいわゆる10増10減の配分見直しがなされるとみられている。

 小選挙区だけではなく、比例ブロックの定数も東北、北陸信越、中国の地方の各ブロックでマイナス1の3減、逆に東京でプラス2、南関東でプラス1の3増の見直しが予想されている。

 これにより衆議院では東京圏をはじめとする地域の定数の重みが増加し、地方の重みは低下することとなる。衆議院は首相の指名、予算の審議などの優越権を持つため、衆議院における定数の配分は、日本における政治的な意思決定における地域間の重みの配分ともいえる。見直し後では、小選挙区で東京の定数30に対し、鳥取はわずか定数2となる見込みである。

人口の社会減が起きたことのない東京圏

 東京圏への定数配分増加となる今回の結果は、最初に述べた1票の格差を是正するための措置であり、有権者が多い東京圏により多くの定数が配分されることは「正しい見直し」ということもできる。しかし、国勢調査における人口比に基づく定数配分は、現住の人口数に基づく配分であるといえる。すなわち、東京圏に居住する現有権者がすべて東京圏出身というわけではないことにも留意する必要がある。

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