2014年11月に「まち・ひと・しごと創生法」が成立し、翌年から始まった「地方創生」。国は60年に約8700万人になると推計される人口減少に歯止めをかけ、1億人程度を確保するという人口ビジョンを掲げ、それを実現するための総合戦略を策定した。そして、全ての自治体にも、国の戦略に沿った形で人口ビジョンと地方版総合戦略を策定するよう努力義務を課した。
各自治体において、地域の特性を生かした独自の取り組みが検討されることが期待されたが、実際に策定された地方版総合戦略が本当に各自治体の実態に即しているかは怪しい。地方自治総合研究所が17年に全自治体に対して実施したアンケートによれば、集計母数1342自治体のうち約8割が総合戦略の策定をコンサルタント等へ委託していた(自治体によって委託内容に幅がある)。
そして、その受注額、受注件数ともに東京都に本社を置く機関が全体の5割以上のシェアを占めていた。総合戦略の策定に際しては、国から各自治体に1000万円ずつ予算措置が行われているが、地方創生のための予算まで東京一極集中となっているのは何とも皮肉だ。
同研究所主任研究員の今井照氏は、「14年11月にまち・ひと・しごと創生法が成立し、国は各自治体に15年度中の総合戦略策定を要請したが、自治体内の予算取りや、策定後の国への交付金申請の時間等を踏まえると、各自治体に与えられた策定期間は実質半年くらいしかなかった。こんな短期間で将来の人口ビジョンを踏まえたまともな戦略が作られるのだろうか」と疑問を呈す。
実際に、同アンケートにおいても、総合戦略の策定期間が十分に確保できたかという問いに対し、半数以上の自治体が「確保できなかった」と回答している。こうした点も、多くの自治体が戦略策定を外部委託した要因の一つかもしれない。
国に策定を求められ、短い期間の中で形式的に策定したような総合戦略のもとでは、持続可能な地域創生は進まないだろう。今年4月から始まる地方創生第二期に向け、各市町村は再び地方版総合戦略の策定を求められた。第一期の現状を踏まえ、第二期の戦略策定がどう進むのか注目したい。
■幻想の地方創生 東京一極集中は止まらない
Part 1 地方創生の”厳しい現実” 「破れたバケツ」状態の人口流出を防げ
Part 2 人口争奪戦で疲弊する自治体 ゼロサムゲームでは意味がない
Interview 地方創生の生みの親が語る、第二期へ向けた課題 増田寛也
Part 3 「観光で地方創生」の裏で乱立する「予算依存型DMO」
Part 4 全ての自治体は自立できない 広域連携を促す交付税改革を
Column 農村から都市に移る国政の関心 地方の”自律”に向けた選挙制度とは?
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