2024年7月25日(木)

都市vs地方 

2022年2月1日

 社会全体の厚生を重視するのであれば、一極集中の是正が間違いなく正当化できるのは、集中した場所へのさらなる人口流入により引き起こされる外部不経済が外部経済を上回る場合である。このような場合は、一極集中が過度に生じているため、それを抑制する必要がある。もし逆であれば、一極集中の抑制は社会厚生を悪化させる。

東京圏の一極集中が過大であるかは明白ではない

 こうした集中先である大都市が過大かどうかについて、ある程度は研究成果が蓄積されてきた。例えば、金本良嗣東京大学名誉教授の2006年の論文では、通勤パターンで定義した大都市雇用圏と呼ばれる都市圏について、その人口規模が過大かどうか検討されている。

 データの限界から、それぞれの都市圏が過大かどうか絶対水準での結論は得られていないが、相対的には東京や大阪が他の都市圏に比べて過大で、その2つは同程度であることが示された。これ以上の結論を得るためには、厳密性を犠牲にせざるを得ないが、可能性を探るため、筆者は、かなり強引な仮定をおき、いくつかの簡便法を用いて絶対水準でみて過大かどうかを確認してみた。

 詳細は割愛するが、日本最大の都市圏である東京から6番目の都市圏である福岡までが過大になる場合から、全ての都市圏が過大ではなくなる場合まで、かなり幅のある結果となった。繰り返しになるが、この結果はあくまでも参考程度の結果であることに留意する必要がある。しかし、少なくとも東京が明らかに過大であるわけではない、ということを示唆している。そのため、現時点では、東京の一極集中だけを他と区別して解消しようとする論拠とはならない。

 それぞれの地方自治体が独自の財源で取り組む場合はそれぞれ別の視点に立つ必要があるが、少なくとも日本政府が主導するのであれば、どのレベルの一極集中が是正対象になりうるか、便益と損失についてのより詳細な定量的分析が必要である。

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 東京と言えば、五輪やコロナばかりがクローズアップされるが、問題はそれだけではない。一極集中が今後も加速する中、高齢化と建物の老朽化という危機に直面するだけでなく、格差が広がる東京23区の持続可能性にも黄信号が灯り始めている。「東京問題」は静かに、しかし、確実に深刻化している。打開策はあるのか——。
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