2024年7月16日(火)

都市vs地方 

2022年12月8日

 近年の増便による乗客増加を地上交通で支えてきたのは京急本線・羽田空港線連続立体交差化(2012年完成)によるバス輸送の利便性向上だった。

 今後、京急空港線の羽田空港第1・第2ターミナル駅引上線地下トンネル工事による運転本数増加等による輸送力向上もはかられる。臨海地下鉄を中心とする東京ベイエリアの交通ネットワークは飛躍的に充実する。

税金の使い方として適当か

 「臨海地下鉄につぎ込む税金は、福祉そのほかに使うべき」とする反対の声がある。社会経済構造、特に労働構造が変わって、非正規労働者が増え、福祉需要も質的・規模的に増えている。コロナ禍による生活困難者も増えた。単に手当支給等の金銭給付だけでなく、きめ細かいサービスが求められている。

 福祉政策・福祉サービスを充実するには財源が必要であり、そのためには地域経済と雇用を充実することが大切である。そのための基盤整備が都市自治体の役割である。

 東京都は47都道府県で唯一、日本政府から地方交付税を受け取っていない。経済活動から得られる法人事業税・固定資産税等が大きいからである。

 東京五輪・パラリンピックでは、選手村や多くの競技場がこの臨海地域に配置された。これらの施設は、これからさらに重要性が増す文化芸術・スポーツ・エンターテインメント・展示場などの拠点となる。東京都が「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」等で推進してきた再生可能エネレルギー、次世代モビリティ、環境改善・資源循環など持続可能な開発目標(SDGs)やデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための先端技術開発の拠点ともなる。

 こうした臨海地域の経済活性化は税収の拡大にもつながり、そのお金は福祉の充実にもつながる。都市政策への投資が時には必要なのだ。

財源はどうするべきか

 臨海地下鉄の概算事業費は約4200億~5100億円と見込まれている。これの全てを税でまかなうわけではない。運賃収入による回収のほか、東京メトロ株の配当や株の売却益が考えられる。

 都は東京メトロによる配当金を鉄道新線建設等準備基金に積み立てているが、22年度見込み額は830億円である。一方、国が53.4%、都が46.6%保有している東京メトロの株式をそれぞれ4分の1ずつ売却することで合意している。相当額の収入が見込まれる。

 国は02年に当時の帝都高速度交通営団を民営化する法律を制定して、国と都が保有する株式について「できる限り速やかに売却」とした。11年には東日本大震災の復興財源確保法で東京メトロ株の売却益を復興財源にあてると明記した。

 しかし都が「国が売るならその株を都が買う」という姿勢を示し、国は売ることができなくなった。東京メトロは「副都心線を最後に新たな投資は行わない」と表明してきた。

 東京都は長い年月にわたって東京メトロを都の所有にしようとしてきたが、21年に小池知事が現実方針に大転換し、東京メトロが有楽町線の豊洲-住吉延伸と南北線の白金高輪-品川延伸を実施するなら都も国に歩調を合わせて株を売ることにした。


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