2023年9月24日(日)

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2023年5月29日

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池上重輔 (いけがみ・じゅうすけ)

早稲田大学 大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授

早稲田大学商学部卒業。一橋大学経営学博士、ケンブリッジ大学経営大学院MBA、シェフィールド大学大学院国際関係学修士、ケント大学大学院国際関係学修士、シェフィールド大学大学院国際政治経済学修士。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、MARS JAPAN、ソフトバンクECホールディングス、ニッセイ・キャピタルを経て2016年より現職。東証一部上場企業の社外監査役、社外取締役を歴任。Academy of International Business (AIB) Japan country director。国際ビジネス研究学会(JAIBS)、日本マーケテイング学会、戦略研究学会の理事。著書に『日本のブルー・オーシャン戦略』(ファーストプレス)、『シチュエ―ショナル・ストラテジー』(中央経済社)、『インバウンド・ビジネス戦略』編著(日本経済新聞社)、『インバウンド・ルネッサンス』編著(日本経済新聞社)、『マーケテイング実践テキスト』編著(日本能率協会)等多数。

 前回「世界で1位になった日本の観光ランキング その生かし方」で、世界経済フォーラム(WEF)の観光ランキングTravel & Tourism development Index(TTDI)の概要に関してお伝えした。このランキングは世界127カ国を対象にしており、日本が1位で、2位米国、3位スペイン、4位フランス、5位ドイツ、6位スイス、7位豪州、8位英国、9位シンガポール、10位イタリアとなっている。さらなる活用に向けてもう少し詳細に見てみよう。

(frantic00/emicristea/bluejayphoto/TomasSereda/Tzido/tawatchaiprakobkit/gettyimages)

 このTTDIは5のサブインデックスと17のピラー(柱)によって構成されている。各柱はそれぞれ4〜15の具体的な指標によって構成され、合計112の指標によって成り立っている。今回はそのいくつかのピラーの中で、社会インフラに注目してみたい。

「治安の良さ」という外国人が来やすい環境 

 まず、「Safety and Security (6 indicators)」である。 safety は「物理的に危険がなく安全な状態」を表し、security は「危険から守られていて安全な状態、危険などを心配したり恐れたりする必要がないこと」だ。日本はこのスコアが7点満点中6.1と世界最高水準である。

 安全・安心は、その国の情報通信産業の成功を決定付ける重要な要素である。この柱は、その国がどの程度、地元の人々や観光客、企業をセキュリティ・リスクにさらしているかを測定するもので、これが低いとT&T(Travel&Tourism)投資に対する障壁となる。

 犯罪や暴力が多発する国は、観光客の足が遠のき、その土地で観光業を展開する魅力が半減する可能性が高い。ここでは、一般的な犯罪や暴力のコストと発生状況、警察の信頼性、テロや武力紛争について考察している。

 日本の刑法犯の認知件数は2002年にピークを迎えた後、一貫して低下しており、現在は戦後最低となっている。ニュースを見ていると凶悪犯が増えているような印象を持つかもしれないが、実は現在の日本は刑法犯、侵入窃、凶悪犯とも減少しており、凶悪犯は1989年(平成元年)の4分の1位程度になっている。日本の犯罪率は2015年時点で経済協力開発機構(OECD)諸国の中でも、最低水準で、特に凶悪犯罪(殺人・強盗・強姦・暴行)の発生率はOECD諸国中最低であった。

 こうした世界トップレベルの安全・安心に対する動きとしては2点あるだろう。われわれはよく〝安全と水はただと思っている〟ともいわれるが、日本の安全は世界トップクラスであり、魅力になりうることに自信を持つべきであろう。安全自体を声高にアピールするのが良いか悪いかはケースバイケースであるが、この安全を背景に自地域のアピールに自信を持ってしてほしい。


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