2024年5月6日(月)

Wedge REPORT

2023年5月29日

 もう一つはこの安全さの維持である。この安全は警察や警備保障会社などの組織的対応によって担保されているが、一人一人の意識にもよるものでもある。これは来日する外国人観光客もその一人ひとりの一部になる。

 安全確保に必要な行動への要望は明確に提示する必要がある。その際に異文化マネジメントを多少でも勉強しておくと、どのような前提を持つ人がいて、どのようなコミュニケーションをすると理解してもらいやすいかがわかるだろう。その場のルールに対して、日本人には明確に注意をする人でも、外国人が外国語でまくしたてると途中で注意をやめてしまう例を時折目にするが、昨今はさまざまな翻訳・通訳デバイスもあるのでそれも活用してNoなものはやはりNoと伝えてあげるべきであろう。

安心だけでなく、快適さも生む医療インフラ

 続いて「Health and Hygiene (6 indicators)」。 この指標は医療インフラ、アクセシビリティ、医療保障を測定している。

 新型コロナウイルスは、伝染病がT&Tのセクターに与える潜在的な影響を浮き彫りにした。特に、パンデミックの影響を緩和し、安全な旅行を確保する上で、国の医療制度がいかに重要であるかということが証明された。

 一般的に、観光客や企業の従業員が病気になった場合、その国の医療部門が適切な治療を受けられるようにする必要がある。医師、病床、一般的な医療サービスの有無やアクセスによって測定される。さらに、安全な飲料水と衛生設備へのアクセスは、旅行者と地元の人々の快適さと健康にとって同様に重要である。

 日本の1000人あたり病床数がOECD諸国でNo1、人口100万人あたりの病院数が3位、面積あたり病院数が2位であることは比較的よく知られているかと思う。日本の病院のほとんどは個人病院である。ただし、人口1000人あたりの医師数はOECD諸国の中で下位4番目。1000人あたり薬剤師数は断トツの1位、看護師数は7位である。

 医学誌ランセットが「適切な医療を受ければ予防や効果的な治療が可能」と考えられる死因を32種類リストアップし、それぞれについて「防ぎ得る死をどれぐらいちゃんと防げているか?」を調べ、総合的に評価、指数化した「ヘルスケア・アクセス・アンド・クオリティー・インデックス(HAQインデックス)」では、日本が195カ国中12位である。このランキング上位はアイスランド、ノルウエー、オランダ、ルクセンブルク、豪州、フィンランド、スイス等の人口が少ない国なので、人口1億人を超える国の中では日本は1位である。ドイツ18位、英国23位、米国29位なので、日本はある程度バランスよく医療が提供されていることがわかる。

 こうした医療・健康基盤の高さがある一方で、外国人が日本の病院で診療・治療を受ける際に困ること上位は1位「病院で症状を正確に伝えられない」 、2位「どこの病院にいけばよいかわからない」、3位 「病院の受付で上手く話せなかった」、4位「医療費が高かった」、5位「診断結果や治療方法が分からなかった」である(「令和2年度 在留外国人に対する基礎調査報告書」)。

 この分野の対応は専門的なものも多く、専門機関が種々外国人対応を検討・準備しているので、ここで深く入ることはしない。汎用的な対応としては例えば、日本政府観光局(JNTO)の外国人旅行者の具合が悪くなったときの対応サイトや、東京都福祉保健局が出している宿泊施設向けの外国人患者対応マニュアルがある。これを事前に使用訓練してシュミレーションしておくことは必要であろう。医療機関も、例えばコニカミノルタが提供している医療機関向けの20カ国語対応の医療通訳サービスと契約しておくといった対応が可能であろう。


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