2023年4月14日に 政府は日本初のカジノを含む統合型リゾート(IR)の実現に向けて、 大阪府と大阪市の整備計画を認定した。大阪・関西万博の会場となる夢洲の約49万平方メートルに、カジノ(約6.5万平方メートル)や三つのホテル(計約2500室)、国際会議場を整備する。
29年秋~冬頃の開業を目指し、国内外から年間約2000万人の来場者を見込むという。初期投資額は約1兆800億円で、うち建設関連は約7800億円を見込んでいる。日本におけるIRの推進に向けての動きはメディアの報道を追っていただければ良いと思うが、 IR の実態はマクロ面においてもミクロ面においてもあまり知られていない。もしくは誤解が多いように思われる。
IRとギャンブル依存症の世界的現実
まずマクロ面から確認すると、海外のIRは世界の優秀な人材を引き付け、交通インフラをグローバル基準に押し上げ、国際会議や展示会などのMICEやエンターテインメントを含めた観光産業を活性化して、大きな経済効果とイノベーションを生み出す場となっている。
米国のネバダ州、ニュージャージー州、コネチカット州、カナダ、英国、ドイツ、フランスのモナコ、 オランダ、オーストリア、豪州、フィリピン、 マカオ、 シンガポール、韓国、南アフリカなどで IR ・カジノ施設が存在する。そのすべては観光振興、財政への貢献、雇用創出を目的としているが、ネバダ州、オランダ、フィリピンなどは違法賭博の排除を目的としてIR を設置している。公的なカジノを運営することによって違法賭博を削減するということも可能であることは理解しておくべきだろう。
ギャンブル依存症を懸念する意見は常に聞かれるのだが、シンガポール国家賭博問題対策協議会は、11年と14年の数値を比較し、IR導入後は依存症患者などの割合が2.6%から0.7%へ減少していると結論付けている。ただし 週に1回以上ギャンブルする人の割合が68%から83%へ増加したこと、ギャンブル依存症患者のギャンブル開始年齢が低年齢化したことも報告されている。
またマカオ大学ゲーミング研究所が03年と07年に15~64歳のマカオ居住者を対象にギャンブル依存症調査を行った結果、03年の問題賭博推定有病率が4.3%から、07年に6.0%になり、1.7 ポイント増加したと報告している。 しかし、16年には依存症対策の効果で2.5%に低下している。日本はこうした依存症対策の海外から広く学んでおく必要がある。