2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2023年4月24日

「伝統ある」英国カジノから学ぶこと

 カジノを持つ国は10カ国以上あるが、英国のカジノでは、貴族の社交場的な会員制を継続していることも多く、文化の伝承を目的にしている面もある。大阪は主にはシンガポールからノウハウを学ぶことになっているが、日本の特徴を考察するならば、英国のカジノの現実を学んでおく必要があるのではないか。

 ここで、英国のカジノで実際にディーラーやフロアのマネージャーを経験してきた人物からのヒアリングを基に英国で最も歴史あるカジノ「Grosvenor Casino」でどのような現場運営が行われてきたかを共有したい。

 カジノは24時間運営なのだが、カジノによって顧客の最大滞在可能時間は異なる。英国カジノでは最大滞在時間は14~24時間だが、それを超えると一回カジノから出なくてはいけない。筆者が話を聞いた人は、朝6時から午後2時までで勤務しており、夜のイメージが強いカジノが昼の12時ごろからにぎわっていたことに最初は驚いたという。

 英国のカジノがギャンブル依存症に関して、必ずしも体系だった仕組みを提供しているわけではないのだが、会員登録をした顧客には全員にIDが付与されており、顧客がどの程度の期間に、どのくらいの頻度で来訪し、どの程度お金を使ったかということはメンバーシップカードと連携されて全て補足されている。また、その顧客がどの程度の資産を持っているかということを登録する場合もある。

 カジノの方で顧客の状況を勘案し、カジノ側が問題ありそうだと判断した場合には声をかけ、カウンセリングする専門家もいる。依存症で危険と判断した顧客を例えば半年程度の出入り禁止にするという措置も取られる。

 ポイントは、メカニカルに行うのではなく〝一定の経験を持ったプロフェッショナル〟がトラブルシューティングから顧客対応の判断まで行うことである。日本でも、いかにそうしたプロフェッショナルを早期に育成するかという点が重要になるであろう。

 どうしても箱物の設備や、ルールの整備などに目が行きがちだが、サービス業の要点は人材である。現場における担当者も重要だが、いかにプロフェッショナルのマネージメントを育成するかが最も重要な課題になるのである。カジノ業界の共通言語は英語なので、インバウンド客向けの人材を海外から読んでくることは可能であるが、日本人のプロフェッショナルを育成することで、日本独自の戦略を構築することも可能になってくる。

世界を見た人材育成とマーケティング戦略の重要性

 英国のカジノで特徴的なのは、その会社・組織の中に人材育成の仕組みを持っている点であろう。 あまり経験のないディーラーを数カ月で一定のレベルのリーダーに育成し、その中である程度資質あるものはフロアのスーパーバイザーに任用し徐々に育成していく。

 会員制のカジノは顧客も経験豊富な場合が多く要求水準も高くなりがちである。こうした顧客に対応できるようなディーラーやスーパーバイザー、マネージャーを育成していく中でカジノ業界全体の水準が上がっていくのである。

 IR間の国際競争が厳しくなる中で日本のカジノの国際競争力を心配する声もあるが、それゆえに米国以外の中国やマカオでもエンターテインメントサービスを経営してきた経験豊富なMGMリゾーツのようなIR事業者と提携し、どのように場の魅力を構築し、海外へプロモーションするかを学ぶ必要があるだろう。


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