2024年5月5日(日)

Wedge REPORT

2023年5月29日

 TTDIのこの指標では新型コロナの対応そのものを評価しているわけではないが、一定の経済活動を継続しつつオリンピックのような世界的イベントを行っても、なお100万人あたりの新型コロナ死者数はOECD諸国の中でも最低ゾーンに位置する日本の医療安全体制は誇ってもよいだろう。

日本が誇る交通網の課題は二次交通

 日本の交通インフラについても注目すべきである。「Air Transport Infrastructure (4 indicators)」が示す航空輸送は、旅行者が各国へ容易にアクセスでき、また国の中で移動するためにも不可欠であるが、日本はこのスコアは5.6で、アジア圏でトップクラスである。

 この柱では国際線と国内線の航空路の容量と質を、有効座席数、運航航空会社数、航空輸送サービスの効率性などの指標を用いて測定している。また、その国の空港が世界の航空輸送ネットワークにどの程度統合されているかも測定している。

 「Ground and Port Infrastructure (7 indicators)」では、重要なビジネス拠点や観光地への効率的かつアクセスしやすい地上・港湾輸送の可用性を測定している。日本のスコアは6.3と、これもアジアトップクラスである。他にアジア圏で6.0を超えるのは土地面積が狭い香港とシンガポールである。

 道路や鉄道網が十分に充実していることに加え、道路・鉄道・港湾のインフラの快適性、安全性、環境負荷の小さい鉄道輸送を主体とする「モーダルシフト」が国際基準を満たすことが、T&Tの経済を発展させるために不可欠である。また、この柱は特に都市部で観光客や従業員が日常的に利用する地下鉄やタクシーなどの公共交通機関の効率化と利用しやすさを追求している。

 こうした移動インフラの今後の対応としては二次交通の充実が最も重要になるだろう。せっかく海外から日本へ、日本のある程度の大都市間を繋ぐ移動のインフラは整っているのに、二次交通で分断される地域は少なくない。

 秋田県「秋田エアポートライナー」のような乗り合いタクシー、岩手県「花巻温泉郷無料送迎バス」のようなシャトルバス、鳥取県「外国人観光客のための周遊タクシー」など、日本各地でさまざまな工夫が行われている。そのベストプラクティスを共有することは有効であろう。ただし、地域毎に状況や前提は異なるので、外部事例をそのまま活用するのではなく、その本質は何かをよく考えて学んでほしい。できれば事例を見る前に何をすべきかの仮説を考えてから事例を探すのが望ましい。

 日本の観光関連インフラは世界でも有数であり、特にアジア圏では相当の競争力がある。もちろんさまざまな課題はあるのだが、必ずしも大規模投資ではなく、工夫によって対応できる課題も少なくない。

■修正履歴(2023年5月30日12時50分)
3頁目の『山形県「花巻温泉郷無料送迎バス」』は『岩手県「花巻温泉郷無料送迎バス」』でした。訂正して、お詫び申し上げます。

   
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