2024年2月26日(月)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2024年1月16日

 元日夕刻、能登半島で大規模な地震が発生し、1月14日現在、死者220人、負傷者974人という大きな被害が出ている 。2日夕刻、羽田空港に着陸した日航機が海上保安庁機と衝突炎上し、海保機の乗員5人が死亡したが、日航機の搭乗者379人は全員が事故機から脱出した。これらの災害と事故の詳細は連日詳しく報道されているが、そこから報道姿勢に課題が見えてくる。

能登半島地震を伝える新聞記事(當舎慎悟/アフロ)

報道が作り出す不安

 震源地の能登半島北部から100数十キロメートル離れた新潟市では1月14日時点で17棟が全壊、472棟が半壊と判定された 。市内の住宅数は約30万戸であり、被害を受けた住宅は0.2%弱と少なかった。

 大手のホテルや温泉旅館では被害はほとんどなく営業を続けていたが、地震直後から宿泊や会合のキャンセルが相次いだ。地震の被害が大きかったのではないかという不安と、余震の不安のためであることは理解ができるが、問題はなぜ多くの人がそのように判断したのかだ。

 さかのぼると2007年7月に発生した中越沖地震の時にも新潟市の宿泊施設などは1000億円と言われる大きな風評被害を受けた。震源地に近い柏崎刈羽原発では4基の原子炉が運転中だったが、地震を感知して想定通り緊急に冷温停止状態に入り、安全は保たれた。

 燃料貯蔵プールから冷却水が敷地内にあふれ出す事故があったが、放射線量は排出基準の10億分の1 で放射能泉であるラドン温泉と変わらない程度だった。ところが新聞各紙はこれを「放射能水流出」などと題して大きく報道し、広範囲の放射能汚染が起こったという誤解と不安が広がった。その結果、夏休みの海水浴シーズンでかき入れ時のホテルや旅館のキャンセルが相次いだのだ。

 安全か危険かは情報がなければ判断できない。情報源はメディア報道しかないため、そこに問題があれば正しい判断はできない。中越沖地震当時の報道の状況を検証した研究では、重大な放射能漏れがありその周辺は危険な状況にあると誤解させるような不適切な報道が新聞各紙に見られた

 記事の影響は国内だけではなかった。イタリアでは原発からの放射能漏れで避難民が発生したという完全な誤報を連日報道し、これを信じたサッカー1部リーグ・セリエAのカターニャが来日ツアーをキャンセルしたのだ(「日本中に放射能が飛散して危険」 欧州駆け巡るトンデモ事故情報: J-CAST ニュース)。イタリアの新聞の情報源が日本のメディアであることは想像に難くない。

 原発の危険性を強調する偏りは能登半島地震の震源地に近い志賀原発をめぐる報道でも見られた。北陸電力によれば原発敷地内の変圧器が地震で破損し、約2万リットル以上の油が漏出して、5系統の電力網のうち2系統が使用不能になった。


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