生成AIのChatGPTに砂糖と肥満の関係を質問したところ、「砂糖は高カロリーなので過剰な摂取は肥満のリスク要因となる」と答えた。ChatGPTはよく間違えるので、この答えを検証してみよう。
砂糖と肥満の関係は?
砂糖が肥満の原因と考えられるようになった歴史は古い。その顛末をJohnsonらの総説(2017年)を参考にして紹介する 。
農業が始まった1万年前に東南アジアでサトウキビの栽培が始まった。紀元前400年頃、インドのガンジス川流域でサトウキビが栽培され、その搾り汁を煮詰めて黒砂糖が作られた。インド古典医学書『スシュルタ・サンヒター』は砂糖と肥満を結び付けた最初の記録と言われる。
サトウキビは600年ごろエジプトに広がった。12世紀の医師マイモニデスはエジプトには糖尿病患者がいるが、砂糖がないスペインには患者がいないことに気付き、糖尿病の原因を砂糖と考えた。砂糖はヴェネツィアに運ばれてヨーロッパに広がったが、その価格は重量当たりチーズの30倍と高価であり、購入できたのは王侯貴族だけだった。そして彼らの間で重度の肥満が流行し、英国の征服王ウイリアム1世(1028~87年)は妊娠中と揶揄されたという。
大航海時代に新世界が発見された。スペインはカナリー諸島で栽培されていたサトウキビをカリブ海や中南米に持ち込んで大規模な砂糖プランテーションを作り、砂糖をヨーロッパに輸出した。英国は当初この砂糖を買い占めたため、フランスなど他の国に比べて砂糖の摂取量が劇的に増加した。
そしてそれまでほとんどなかった肥満、糖尿病、高血圧、心血管疾患が増加した。オランダは東インド会社を通じてジャワ島から砂糖を持ち込み、やはり肥満が増加した。
こうして砂糖が肥満の原因という状況証拠が集まったのだが、それでは科学的根拠はあるのだろうか?
砂糖は高カロリーか?
1824年にフランスのクレマンが水 1 キログラム(kg)の温度を0 度から1度に上げるのに必要な熱量を1キロカロリーと定義した。これを食品に当てはめると糖質とタンパク質の熱量は1 グラム(g)当たり4キロカロリー、脂肪は9キロカロリーになる。
糖質の代表はコメや小麦の成分であるデンプンであり、体内でブドウ糖に変化して筋肉や脳のエネルギー源になる。砂糖も糖質なので米や小麦と同様に1 gが4キロカロリー。だから「砂糖は高カロリー」ということにはならない。