11月11日、12日に東京ビックサイトのフェスで売られたマフィンが自主回収され、大きな話題となりました。店主はInstagramで「全て防腐剤、添加物不使用で市販の焼き菓子の半分以下のお砂糖の量で作っており、離乳食完了期のお子様より安心してお召し上がりいただけます」とアピールしていました。なのに、食中毒を引き起こしてしまいました。
食品添加物は、安全性が評価されたうえで、問題がない量を使われるルールとなっています。しかし、この店主のように「添加物は危ない。無添加が安全」と誤解している人はかなり多いことが、消費者庁の消費者意識調査などでもわかっています。
この現象は海外でも同じのようです。2019年に米国で出版され話題となった「A Natural Mistake: Why natural, organic, and botanical products are not as safe as you think」は、ナチュラルやオーガニック、植物性など、安全、体によさそうというイメージのある言葉が付いた食品の科学的な実態を記したもの。米国食品医薬品局(FDA)の薬物評価研究センター所長や米国環境変異原学会長などを務めたDr. James T. MacGregor氏(以下、マクリガー博士と呼ぶ)が執筆しました。安全とは言い難いのに、人々が安全と信じ込んでいる状況を “ナチュラルミステイク”と名付け、詳しく解説したのです。
日本でも2年前に翻訳され、「ナチュラルミステイク 食品安全の誤解を解く」として出版されています。しかし、誤解は根強く、今回のような食中毒事故にもつながったように思えます。
そこで、この書籍を監訳した林真、森田健両氏に話を聞きました。二人は、化学物質の発がん性等に詳しく海外でも知られた専門家です。お二人には、日米の状況はどう見えているのか? 日本の消費者は、ナチュラルミステイクによりどんな不利益を被っているのか? なにに気をつければよいのでしょうか?
森田健さん:独立行政法人製品評価技術基盤機(NITE)化学物質管理センター上席技術専門官。製薬企業、国立医薬品食品衛生研究所安全情報部室長、同安全性予測評価部室長を経て現職。内閣府食品安全委員会の肥料・飼料等専門調査会座長なども務めている。