2022年10月3日(月)

食の安全 常識・非常識

2022年4月28日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤、リスクコミュニケーション担当)。(記事の内容は、所属する組織の見解を示すものではなく、ジャーナリスト個人としての意見に基づきます)

(bee32/gettyimages)

 台湾で、日本のいちごが相次いで残留基準超過となり、輸入差し止めとなっています。台湾の通信社の記事が日本のyahooニュースで報じられると、「日本は残留基準値が世界一甘い」「農林水産省が農薬の散布基準を決定的に緩めてしまった結果」などと、日本から大量のコメントがつきました。週刊誌などにも今後、日本の農作物を危険だとする記事がまた、出てきそうです。

 しかし、これらの意見は妥当とは言えません。残留基準の設定の仕方を理解していないために、複雑な真相を読み取れていないのです。この問題、食品の安全性の問題とは関係ありません。しかし、日本の農業関係者のビジネス戦略の甘さを浮き彫りにしています。解説します。

2カ月半でいちご27品が基準超過

 日本から台湾へ輸出され、基準超過となった食品は2月から4月20日までに公表された分で41品あり、うち27品がいちごでした。産地は、熊本や福岡、栃木などさまざま。違反品目は、台湾衛生福利部食品薬物管理署のサイトで検索して調べることができます。いちご以外の違反品目は、アンコウの肝の重金属やニラの残留農薬などさまざまです。

台湾の違反品公表サイト。日本から輸入されたいちごを調べた 写真を拡大

 多いのは殺虫剤クロルフェナピルとフロニカミドでした。クロルフェナピルは日本では収穫前日まで使え、残留基準は5ppm。台湾ではいちごには使用できず、残留基準は0.01ppmです。同様に、フロニカミドも日本では収穫前日まで使え残留基準は2ppm。台湾ではいちごには使えず残留基準が0.01ppmです。

 日本では使用も残留も合法的ないちごが、台湾に渡ったとたんに基準超過となる。「台湾の基準値の69倍の農薬が残留」などと説明されるとインパクトがあります。日本は農薬に緩い、という印象につながります。

 しかし、そんな単純な話ではないのです。そもそも、クロルフェナピル、フロニカミド共に、台湾でほかの野菜やくだものなどには使用でき、数ppmというような残留基準値が設定されています。危ないからいちごの残留基準が厳しく設定されている、というわけではありません。

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