2021年の農政を振り返って、何と言っても衝撃が大きかったのは、国が有機農業の拡大方針を打ち出したことだ。世界を見渡すと、環境負荷の低減が欧州連合(EU)を中心に叫ばれている。が、そのEUですら、厳しい環境対策に農業者が不満を募らせていて、一枚岩ではない。22年以降、農業における環境負荷の低減に本腰を入れるはずの日本は、環境を巡る対立の中で、どう立ち回るのか。
「グリーン・ディール」が欧州と一部の国を席捲
脱炭素と経済成長を両立しようとEUが掲げた「欧州グリーン・ディール」は、世界の農業に波紋を広げている。そのうち、農業に関わる「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略は20年に発表され、化学農薬の使用半減、化学肥料の20%削減、有機農業の面積を25%まで拡大といった目標を掲げる。かなり先鋭的な内容であり、かつ、欧州以外の国々の農業政策にも大きな影響を与えてきた。
そんな国の一つが日本で、21年5月、同戦略のコピーと言っていいような「みどりの食料システム戦略(以下、みどり戦略)」を発表した。化学農薬の使用量50%減、化学肥料の使用量30%減、有機農業の面積を25%に――といった目標を掲げている(詳しくは「国が自画自賛する『みどりの食料システム戦略』の残念な中身」)。
これらの目標を実現するため、22年度以降、有機農業の拡大や化学農薬、化学肥料の削減のために、さまざまな施策が実行される見込みだ。みどり戦略関連の予算は、約70億円に及ぶという。