お花畑の農業論にモノ申す

2021年11月9日

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 有機農業の農地を2050年に全体の約25%(100万㌶)にすると、今年5月に国が掲げた「みどりの食料システム戦略(以下、みどり戦略)」。実行に向けた法制化の準備や農林水産省の組織改編、来年度予算概算要求が進められているが、現状のわずか0・5%(18年)という規模から、一体どうやって有機農業を拡大させるのか。

(jchizhe/gettyimages)

現実との差に有機農業関係者も困惑

「有機農業25%? それは無理」
「何も中身がない」
「EUの農業戦略のコピー」

 今年5月に策定され、食料システムの改革を議論した「国連食料システムサミット」(9月にオンラインで開催)で当時の菅義偉首相が国際社会に向けて発信したみどり戦略は、農家の間で評判が悪い。

 有機農家や有機農業に関心のある農家に意見を聞いても、返ってくるのは上のような批判が多い。これらの農家は当然ながら、有機農業が必要で、もっと広まってほしいと考えている。そのため、国が有機農業拡大の音頭をとることは歓迎しつつも、みどり戦略には苦言を呈さざるを得ないというのだ。

 有機農業は、基本的に化学的に合成された肥料や農薬を使わず、環境への負荷をできるだけ減らし、その土地での物質の循環を重視する。環境にやさしいイメージがあり、農薬や化学肥料を使った農産物よりも高めの値がつくことが多いものの、技術が確立されていないところがあって、難易度が高い。そんな有機農業が花形として扱われる戦略に、農薬や化学肥料を使う慣行農業の関係者が批判的なのは当然だが、有機農業の関係者すら手放しでは喜んでいない。

専門家からも批判の声

 批判は、研究者からも起こっている。有機農業の研究者や指導者、実践者などで構成する日本有機農業学会は、みどり戦略の中間とりまとめが3月に出たのを受けて、同月、大幅な見直しを求める学会提言を出した。

 こうした有機農業の関係者に共通する意見は、みどり戦略は寝耳に水であり、「戦略」とは言いながら具体的な戦略がないということだ。同戦略の農業に関する柱には、下の三つがある。

①化学農薬の使用量(リスク換算)を50%低減
②輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量を30%低減
③耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万㌶)に拡大

 これらを「2050年までに目指す姿」としている。野心的な目標といえば聞こえはいいが、現実との乖離があまりに大きいため、多くの農業関係者は農林水産省にこれらの目標を達成する意志はないとみている。

みどり戦略は、EUの「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略のコピーと揶揄される。農林水産省「みどりの食料システム戦略」より 写真を拡大

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