2021年の農林水産物・食品の年間輸出額が初めて、1兆円を突破する見込みとなった。上半期(1~6月)の輸出額が過去最高となり、もともと19年に達成すると掲げた目標の2年遅れの到達見込みを歓迎する報道が目立つ。が、そもそもこの目標設定に意味はあるのか。上半期の輸出額の40%は、アルコール飲料やソース調味料をはじめとする加工食品だ。目標の達成が農林水産業の振興には直結しない実態がある。
チョコレートやコーヒー、ソースが日本の「農産品」?
「農林水産物・食品の輸出額」は、農林水産省が毎年発表するもので、8月3日、上半期は前年同期比30.8%増の5407億円になったと発表された。それを受けて、この輸出額がまるで農林水産業の振興の度合いを示す指標であるかのように報道されている。
「今年上期の農産物輸出額は過去最高 年1兆円視野に」(朝日新聞、8月4日)
「農産物輸出、最高の5000億円超 1~6月、牛肉や清酒好調」(共同通信、8月3日)
「農水産物輸出 ニーズ捉えて拡大加速したい」(読売新聞、8月24日)
いずれも農産物あるいは農林水産物の輸出額であるかのような見だしだ。記者発表や公表資料は、農林水産物の輸出増加を強調していて、農産物を例に取ると、牛肉(223億円、前年同期比119.3%増)や日本酒(174億円、同91.7%増)、コメ(27億円、同1.3%増)などの伸びが説明されている。
そうではあるが、この輸出額にはチョコレートやコーヒー、ココア、ソース混合調味料、清涼飲料水、パーム油なども含まれている。しかも農水省はこれらを「農産品」に分類している。原料はほとんどが輸入品で、輸出が増えたところで日本の農林水産業への影響は少ないにもかかわらず、である。