2022年7月1日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2021年9月16日

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安倍政権の所得倍増計画の置き土産

「農林水産物・食品の輸出額を1兆円に」。この目標は、安倍晋三政権が13年に農業・農村所得倍増計画の三つの方策の一つとして打ち出した。残り二つは、六次産業化と農地集積だった。

 もともと20年までに1兆円としていたのを、16年に1年早めて19年までにすると方針転換する。が、実際には19年の達成はならず、20年はコロナ禍で特に上半期の成績が悪く、今年ようやく達成する見込みとなった。

 輸出額1兆円を達成しても、農業の所得増に結びつかない。当然ながら、今年1兆円に達したところで、農業所得は倍増しようがない。これは、当初から農業関係者の間で言われてきたことだ。

 原料を海外から輸入して加工し、加工品を販売する加工貿易は、日本の得意分野だ。食品も例外ではなく、金額ベースで40%(21年上半期)を占める加工食品の原料の多くは、海外から来ている。つまり、輸出額が増えても、国内の農家が潤うとは限らない。そもそもの目標設定がずれているのである。

加工食品の原料の大半は海外産

 国産原料ももちろんあって、「日本酒の原料は日本のコメなので、日本酒が売れるイコール、コメが消費されているということになる」と農水省輸出企画課は強調する。日本酒についてはその通りだが、たとえば味噌や醤油などさまざまな加工食品の原料となるダイズは、ほとんど輸入に頼っている。小麦も同様である。

 あられやおかきといった米菓ですら、価格の安い輸入米を使うことが多い。農水省が自民党の要求に応え、躍起になって米価をつり上げた結果、皮肉なことに原料の海外産への切り替えを促してしまった。

 業務用に使う野菜や果実も、一般的に国産よりも海外産を使う。海外産が安い場合もあれば、国産と大差なくても、規格が統一されていて使いやすいと好まれる傾向にある。つまるところ、輸出額のどの程度が国内で生産された農林水産物に由来するかは「把握できていない」(輸出企画課)のである。

 農水省が頭に「農林水産物」を冠して発表するために、あらぬ誤解を生んでいる。いや、むしろ誤解が生じることを狙って目標を設定し、発表していると言ってもいいだろう。「農林水産物・食品の輸出額」は、農林水産業と直結した指標だと一般に誤解されているのではないか。こう輸出企画課に尋ねたところ「(受け取る)人の捉え方だと思う」との回答だった。

5兆円目標、倍の概算請求に募る不安

 「輸出額1兆円」がそもそも目標設定としてずれているにもかかわらず、1兆円の達成が目前となった20年、国はさらなる目標を打ち出す。農林水産物・食品の輸出額を25年までに2兆円、30年までに5兆円にするというのだ。

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