2024年10月27日(日)

World Energy Watch

2024年10月25日

 2023年10月に始まったガザ危機から1年が経過し、イスラエルと周辺諸国の武装組織間での戦闘が激しさを増している。10月1日には、イランが今年4月以来、2度目となるイスラエルへの攻撃を実施した。

イスラエルのガス田。紛争により​影響が出ている(AndrCGS/gettyimages)

 イスラエルからイランへの報復が予想される中、イスラエルおよびイランのエネルギー産業の行方が注目される。中東情勢のさらなる悪化は、国際原油価格の高騰の引き金になる他、ペルシャ湾岸地域から日本へのエネルギー供給の不安定化につながる恐れがある。

イスラエル天然ガス産業への影響

 ガザ危機はイスラエルの天然ガス産業に悪影響を及ぼした。イスラエルは2010年代に沖合のガス田開発に成功し、生産量を飛躍的に拡大させ、産ガス国としての存在感を示してきた。23年のガス生産量は24.7BCM(10億立方メートル)を記録し、うち11.6BCM(47%)がエジプトおよびヨルダンに輸出された。

 エジプトは22年6月にイスラエルおよび欧州連合(EU)と調印した覚書に基づき、輸入したイスラエル産ガスを液化天然ガス(LNG)施設で液化した後、欧州諸国へのLNG輸出を行ってきた。この点から、イスラエルのガス輸出の増加は、ウクライナ戦争を機にロシア産ガス輸入を控える欧州諸国のガス調達にも寄与している。

 しかしガザ危機後、ガス田開発を手掛ける米国のシェブロン社は安全性に関する懸念を理由に、南部沿岸のタマル・ガス田の生産と、イスラエル・エジプト間の「東地中海ガスパイプライン(EMG)」の操業を約1カ月停止した。

 さらに24年10月6日、シェブロン社とイスラエルのニューメッド・エナジー社およびレシオ・エナジーズ社の3社は、ガザ戦争に伴う治安情勢の悪化を理由に、リバイアサン・ガス田拡張事業を25年4月まで6カ月中断すると発表した。また、ガザ戦争の進展次第で拡張計画がさらに遅延する可能性を示唆した。


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