最終盤に差し掛かった米大統領選の帰すうがイスラエルのネタニヤフ首相に握られている構図が鮮明になってきた。大統領選はイスラエルのパレスチナ人への攻撃をめぐってユダヤ系が支持、アラブ系が反対しているが、僅差で勝敗が決まる接戦州がこの影響をもろに受けるからだ。ネタニヤフ氏が共和党のトランプ氏と「オクトーバーサプライズ」を演出するとの見方も浮上してきた。
ジレンマのハリス
米国の各種世論調査を総合すると、民主党の大統領候補になって以来、支持率でリードしてきたハリス副大統領の優位は現在、トランプ氏の猛追で完全に崩れた。全国レベルではハリス氏が平均2ポイント程度上回っているが、勝敗のカギを握る接戦7州では事実上の五分五分、どちらが勝ってもおかしくない情勢だ。
中でも注目されるのが全米で最もアラブ系が多い中西部ミシガン州の状況だ。同州には中東や北アフリカからのイスラム教徒の移民が約30万人居住しており、本来は民主党支持者がほとんどだった。だが、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃でパレスチナ人の犠牲者が増えるにつれ、アラブ系市民の間ではネタニヤフ政権に軍事援助を続けるバイデン政権への批判が高まった。
ハリス氏に対しても、イスラエルの「虐殺」を止めるために積極的に動こうとしていないとして、支持を撤回する人も増えた。アナリストは「接戦州は2000、3000票差で勝敗が決するかもしれない」と指摘しており、アラブ系票がトランプ氏に流れれば、ハリス氏が同州を落とすことになりかねない。
ハリス氏の「勝利の方程式」は接戦7州のうち、東部ペンシルベニア(選挙人19人)、中西部ウイスコンシン(同10人)、ミシガン(15人)の3州を制することを前提に過半数270人獲得を目指しており、ミシガン州で負ければ、当選は危ういものとなってしまう。このため同氏はアラブ系市民と対話するなど支持のつなぎ止めに必死だ。