2024年11月19日(火)

教養としての中東情勢

2024年9月30日

 イスラエル軍は9月27日、レバノンの首都ベイルート南部にある親イラン民兵組織ヒズボラ本部を爆撃、指導者のナスララ師を殺害した。地下破壊に威力を発揮する「地中貫通弾」を使用したもよう。

イスラエル軍のヒズボラの指導者・ナスララ師の殺害は、一線を越えた行為と言える(Abaca/アフロ)

 イスラエルはこれまで戦闘に歯止めが効かなくなるのを恐れ、同師を狙うことを控えてきたが、ネタニヤフ首相は一切のためらいを捨てた。戦闘拡大の道を選択した首相の思惑とは何か。

ヒズボラの退路断ったイスラエル

 ナスララ師は爆撃された際、本部地下で会議を主催していたとされる。この日の爆撃は今回の戦闘が激化して以来最大の規模で、少なくともビル4棟が崩壊したという。ヒズボラ創設以降、組織をけん引してきたナスララ師の死亡はヒズボラにとっては深刻な打撃で、戦闘員らは「報復の聖戦」を叫んだ。

 今回の事態はイスラエルが先手を取った。イスラエル軍は7月、ナスララ師の側近の司令官を空爆で殺害。緊張が高まっていた中、ヒズボラ戦闘員らが使用しているポケベルなど通信機器を一斉に爆発させ、37人を殺害、約3000人に失明などのけがを負わせた。

 イスラエル軍はその後も攻撃の手を緩めず、ヒズボラの拠点などレバノン全域の2000カ所以上を大規模爆撃、これまでに戦闘員、市民ら約700人を殺害した。これにヒズボラもロケット弾やミサイル300発以上で反撃、イスラエル中部の商業都市テルアビブに初めて弾道ミサイルも発射したが、撃墜された。

 両者の対立激化はガザ戦争ぼっ発が発端。イランの支援を受けるヒズボラはイスラエルによるガザの虐殺を止めるのは宗教的、人道的な義務だとしてイスラエル北部への攻撃を強化、ユダヤ人住民約6万人が避難を余儀なくされた。レバノン側でも南部の市民ら約20万人が難民化した。

 ナスララ師はポケベル爆弾事件を「宣戦布告だ」として報復を宣言、ネタニヤフ首相はヒズボラに対し、イスラエル国境から約20キロメートルのリタニ川以北への撤退を要求した。イスラエル側はさらにガザ戦争の終結の新たな条件として、「北部国境地帯から避難した住民の帰還」を含めると決定、ガザ戦争とヒズボラとの戦闘を結び付けた。


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