2024年10月28日(月)

World Energy Watch

2024年10月25日

 今年6月に承認された拡張事業では、リバイアサン・ガス田の生産量を現在の年間12BCMから21BCMに増加させるとともに、同ガス田から洋上ガス生産プラットフォームへの3本目の海底パイプラインを敷設し、輸出能力を拡大させる計画である。

 拡張事業が中断した背景には、イランによるイスラエル本土への攻撃を受け、安全上の懸念がさらに高まったことがある。10月1日にイランがイスラエルに弾道ミサイルを用いて攻撃を実施した後、シェブロン社は予防措置として、リバイアサンおよびタマル両ガス田の生産を一時的に停止した。翌日に生産活動が再開されたものの、イランがイスラエルの軍施設を正確に射止めたことや、イスラエルのミサイル防衛システムによる迎撃が不十分であったことは、ガス田事業継続にとって不安要素となった。

 今後、イスラエル沖合で3番目に生産が開始したカリシュ・ガス田の操業も安全性の問題に直面するだろう。レバノンのヒズボラが22年に、イラクのシーア派民兵が23年12月にカリシュ・ガス田への無人機攻撃を試みるなど、同ガス田はイランと連携する武装組織の攻撃対象となっている。

 イスラエルの天然ガス産業は貴重な外貨獲得源で、自立的な電力政策を支える要でもあるため、イスラエルを敵視するイランや周辺諸国の武装組織がイスラエルのガス田開発の進展を妨害するような攻撃を活発化させる可能性がある。

制裁下のイラン石油産業

 一方、イスラエルを攻撃したイランの石油産業の動向も注視される。10月11日、米財務省外国資産管理室(OFAC)は、イランによるイスラエル攻撃の報復措置として、イランの石油部門への追加制裁を発表した。今次制裁の目的は、イランの軍事費や、イランが中東全域でイスラエルを攻撃する武装組織に資金提供するための財源となる、イランのエネルギー収入を制限することである。

 制裁の対象は、イランの石油輸出に関係する10企業と17隻の船舶である。これらの企業はUAEや中国、マレーシア、マーシャル諸島などに拠点を置き、主にイラン産原油を中国の製油所に輸送している。米国は、トランプ前政権が18年にイラン核合意を離脱して以降、対イラン制裁を迂回してイラン産原油や石油製品の密輸に関与する企業に対し、度々制裁を科してきた。

 ただ、イランは制裁を受けながらも、重要な財政収入源である石油収入を拡大させてきた。イラン中央銀行によれば、資源輸出額は、制裁再開後のイラン歴1398年(19年3月21日~20年3月20日)の260億ドルから、イラン歴1401年(22年3月21日~23年3月20日)には554億ドルに増加した。

 増収の要因として、ウクライナ戦争に伴う資源価格の高騰や、石油輸出量の増加が挙げられる。原油輸出は19~23年の間、65万バーレル/日(bpd)から132万bpdに倍増し、石油製品輸出も29万bpdから41万bpdに増加した。


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