2022年7月3日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2021年9月16日

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 達成すると農林水産業にどういうメリットがあるのかよく分からないこの目標のために、農水省は多額の予算を要求している。「2030 年輸出5兆円目標の実現に向けた『農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略』の実施」として、今年度は99億円の予算が付いたところを22年度の概算要求では倍の188億円を求めている。

 概算要求の資料を見ると、要求額が最も多いのは、海外での展示商談会やプロモーションの支援のようだ。展示商談会は、確かに大切ではあるが、参加する産地の自己満足に終わることも多いと感じる。

富裕層向けPRは可能か

 私は3年間中国で暮らし、現地のスタートアップにかかわったこともあるので、輸出のターゲット国の一つである中国での国産品のプロモーションについて多少見聞きしている。農水省が輸出拡大の重点品目にしているある農産物の中国でのPRに、費用対効果を考えているのだろうかと思わず首をかしげてしまう人物を起用していた。

 22年度の概算要求には「海外富裕層をターゲットにした新たなマーケット開拓の取組を支援」とも書いてある。中国に関して言うと、富裕層へのプロモーションは難易度が高い。金持ちになるほど、SNSなどの社交の場が、同じレベルの人間しかいないような閉鎖的な空間になる。そこにピンポイントで食い込むには、人脈も専門性も必要だ。

 そういう人間を見つける眼力が担当者にあるのだろうか。農水省内に、中国語のできる人材はいるものの、中国を専門に分析するチームはないという。中国での農業事情について現地調査の動きも活発でなく、少なくとも中国に関しては、農水省の情報収集能力は低い。そのためにプロモーションを任せる人間も、農水省や事業の委託先自らが選ぶというより、向こうからすり寄ってきた人間を選んでいるのではないかとすら感じる。資料の行間から、予算を‶無駄遣い〟する未来が透けて見えてしまう。

 輸出1兆円、さらには5兆円という目標は、華々しく聞こえるものの、達成したところで政府や与党の自己満足にしかならない。地に足のついていない目標を掲げ、その達成に邁進する余裕が、日本の農林水産業に果たしてあるのだろうか。

  
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