お花畑の農業論にモノ申す

2021年9月2日

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本間正義 (ほんま・まさよし)

西南学院大学教授・東京大学名誉教授

東京大学大学院農学系研究科修士課程修了、博士課程単位修得退学。米アイオワ州立大学大学院経済学研究科博士課程修了。成蹊大学経済学部教授、東京大学大学院農学生命科学研究科教授等を経て、現職。著書に『現代日本農業の政策過程』(慶應義塾大学出版会)、『農業問題:TPP後、農政はこう変わる』(ちくま新書)など。

 新型コロナウイルス感染拡大がなかなか治まらない。コロナ禍はさまざまな形で日本経済に影響を及ぼし、農業とて例外ではない。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置、インバウンド需要の減少などによる外食需要の減少は、農産物消費に大きく影響した。テレワークの拡大などで、家庭内での食料消費が増加したものの、全体としては、農業者の6割が売上高にマイナスの影響があったとしている(日本政策金融公庫「農業景況調査」2021年1月調査の結果)。

 農業の生産現場においても影響があり、特に外国人の入国制限で外国人技能実習生が来日できなくなり、他産業からの代替人材などで労働力を確保するなどの対応に迫られた。

 一方、コロナ禍を機に、一部の国が農産物輸出の禁止措置を講じたことから、国内農産物を見直す動きもみられる。国際的にも、コロナ禍の初期に国内流通の混乱で物流が滞り農産物価格が高騰したこともあり、都市農業や近郊農業の重要性が再認識された。

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場当たり的な日本の農業政策

 農林水産省は、農業の環境負荷低減に向け、今年5月に策定した政策方針「みどりの食料システム戦略」(以下「みどりの戦略」)の実現に向け、新法を制定することとしている。

 みどりの戦略は、環境や持続可能な開発目標(SDGs)に配慮した持続可能な食料・農林水産業の構築を目標としたものだが、具体的には、2050年までに、農林水産業からのCO2排出量ゼロを実現、リスク換算で化学農薬の使用量を50%低減、有機農業の取組面積を耕地面積の25%(100万ヘクタール)に拡大、などの目標が掲げられている。

 こうした環境保全型農業の拡大は、その目標の実現可能性はさておき、限られた農業資源の効率的利用とは相反するものであり、実施される農業は環境負荷低減型になるにしても、総体としての日本農業の生産力は後退する。

 それでなくとも、日本農業の生産基盤は脆弱の一途をたどっている。8月公表された20年度の食料自給率はカロリーベースでみて37.17%と、コメの大凶作に襲われた1993年の37.37%を下回り過去最低を記録した。農水省は昨年3月策定の「食料・農業・農村基本計画」において、2030年までにカロリーベース食料自給率を45%とする目標を掲げているが、そこへの道筋はみえてこない。

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