2024年4月16日(火)

お花畑の農業論にモノ申す

2021年9月2日

 エコノミスト誌は、市場の機能を重視し、自由市場を基本とするオピニオン誌であり、食料確保の手段として国産か輸入かの区別を重視しない。EIUも、輸入関税が低いほど食料安全保障の水準が高いと評価する。日本は環太平洋連携協定(TPP)などで農産物関税を撤廃・削減したことが高得点につながっている(共同通信「アグリラボ所長コラム」2021年3月10日)。このような視点で食料の安全保障をとらえる方法があるのを知っておくべきであろう。

日本農業のこれからに必要な意識

 農業は食料の安全保障の一翼を担う大事な産業であるが、その目的を果たすためにも産業として「自立」しなければならない。農政による指針は必要であるが、補助金や過度な規制によって農業者の成長や経営改善意欲を削ぐようなものであってはならない。今日の農業経営は、多種多様な農業者によって担われている。

 2020年の農林業センサスによれば、経営面積100ヘクタールを超える経営体が1933あり、5年間で22%も増加している。経営体の数では100ヘクタール以上は全体の0.2%に過ぎないが、全国の経営耕地面積の11%を占める。確実に構造変化が起こりつつある。

 しかし、農業の規模拡大はゼロサムゲームであり、限られた農地を大規模農家に委ねるためには、小規模農家が農地を手放すか貸し付けるしかない。しかも、100ヘクタールを耕作しているといっても、1個所にまとまっているわけではない。分散された多くの小規模農地の合計であり、農地から農地へと人と機械が移動せねばならず、効率が悪い。1個所ないし数カ所に農地を集約する大胆な政策を導入する必要があり、そのためには農地法の抜本的見直しが求められる。

イノベーションの支援を

 一方で、高度にITやICT、AIなどを活用した、新たな形の農業も出現している。スマート農業と言われる分野だ。これまで、植物工場や施設野菜等での活用がイメージされていたが、水田や畑作での活用もめざましい。農薬や肥料などこれまでより少ないインプットで生産性を上げ、また、労働時間を短縮し、規模拡大や別の作物、他の就業機会に節約された労働を活用することで新たな付加化価値を生み出している。

 今、日本農業に必要なことは、このように多様な農業のフロンティアを拡大していくことだ。それはとりもなおさず、イノベーションを生み出していくことであり、農業政策はそれを支援するものでなければならない。

 横並びで全農家を保護するのではなく、アイデアと経営能力のあるフロンティア農家をどれだけ多く創出していくか。個人でも協業でも株式会社でも形は問わない。日本農業が保護に頼らず自立して初めて、食料の自給率向上も食料安全保障も結果としてついてくるのである。

   
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