2024年4月21日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2021年9月2日

 日本農業をどうするのか。さまざまな政策は場当たり的で、将来ビジョンが不明である。農水省は様々な政策課題に対し、「トリアージ」しながら政策を遂行する必要があるが、その原理原則が国民にも農業者にも見えてこない。

国内供給や輸入、備蓄を総合的に語るべき食料安全保障

 コロナ禍で食料供給、とりわけ安定的輸入に不安を抱かせる事態となったのは、ロシアが小麦やトウモロコシに制限をかけ、また、ベトナムがコメの輸出枠を設けるなど、一時的に食料を囲い込む動きが顕在化したためである。これは今回に限ったことではなく、08年の穀物価格高騰期にも生じた。日本に農産物を提供している主要輸出国ではこうした事態は生じておらず、今回も多くの国がすでに規制を解除している。

 食料の安全保障は、食料の存在だけでなく、その安定供給、物理的・経済的アクセス、そして食料の摂取まで含む広い概念である。すなわち、食料の量的確保だけでなく、個々の状況に応じた食料へのアクセスを確保し、衛生環境が整った状態で食事エネルギーが人々の体内まで行き渡ることを意味する。したがって、広い意味での食料のサプライチェーンのどこがボトルネックとなるかを検証し、そこに重点的な施策を講じる必要がある。

 日本の場合、食料自給率の低さを懸念する声が多い。実際、農林水産省はカロリーベースの食料自給率を「食料安全保障の状況を評価」するものとしている。

 また、食料の安全保障に関するボトルネックは供給の安定性であろう。その意味では、安定的な食料の国内供給と、輸入確保、そして備蓄のそれぞれの費用と便益を考慮して、最適なポートフォリオを組む必要がある。費用を無視し食料自給率自体を目的化する政策は本末転倒である。

国際的に評価の高い日本

 国際的に見て、今日の日本の食料安全保障の評価は決して低くはない。英国のエコノミスト誌の調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が、12年から毎年、「食料安全保障指標(Global Food Security Index)」を公表している。EIUは、各国の食料安全保障の水準を、「価格の手ごろさ」「物理的な入手のしやすさ」「品質・安全性」「天然資源・回復力」の4つの大項目で数値化し、100点満点で評価するものだ。

 最新版(20年)によると、日本は調査対象の113カ国の中で9位(77.9点)だ。食料の購買力や食品の品質・安全性で高く評価された。首位はフィンランド(85.3点)。113カ国の平均は60.45点で、上位をみると、2位アイルランド(83.8点)、3位オランダ(79.9点)と続き7位まで北欧を中心に欧州が占める。

 8位はイスラエル(78.0点)、10位はスイス(77.7点)だ。下位は、経済の破綻、内戦、政治の混乱で深刻な食料不足に悩むアフリカや中東諸国で占め、最下位はイエメン(35.7点)である。


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