2024年12月4日(水)

2021年回顧と2022年展望

2021年12月31日

 みどり戦略が発表されてから、有機農業に関する報道が増え、有機農業に関連する団体の活動が盛んになっているようだ。特にこのところ、有機農業を拡大するうえで肝になりそうな「有機学校給食」つまり、有機農産物を使った学校給食に注目が集まっている。

科学的根拠を欠きがちで農業者が反発

 みどり戦略は、一般には好意的に受け止められているようだ。その理由はおそらく、有機農業に環境にも健康にも良さそうなイメージがあり、かつ、その普及が世界的な流れになっていると伝えられているからだろう。有機農業を推進する人々は、みどり戦略やFarm to Fork戦略の中身がごく当然で、不可逆のものであるかのように言いがちだ。が、実は農業者からの反発はEUにおいてすら、ある。

 EUでは、農業者が環境問題で悪者扱いされることに反発し、大型トラクターで道路を封鎖する「トラクターデモ」を行ってきた。EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業共同組合委員会(Copa-Cogeca)の立ち位置も、微妙だ。Farm to Fork戦略に基本的には賛成としつつ、疑問を提起し、不満を表明している。

 戦略の目標は科学的根拠を欠きがちで、かつ、たとえ達成できたとしても、EUで生産される農産物価格が上がり、安い輸入品に需要を奪われかねない。農業者にとっては生活が懸かっているので、懸念を表明するのは当然だろう。

有機100%というトンデモ目標はあえなく頓挫

 21年、国内農業を全面的に有機農業に切り替えるという夢を掲げるも、頓挫した国がある。スリランカだ。

 もし実現すれば世界初のことで、5月に化学肥料の輸入禁止令を出したけれども、10月にはあえなく解除された。主要な輸出品目である紅茶の質が落ちたのが、堪(こた)えたようだ。

 有機農業は、化学肥料や農薬を使う慣行農業に比べ、収量が数割低くなりがちだ。化学肥料に即効性があるのに対し、有機肥料はじわじわと効く遅効性のため、両者は本来補い合う存在だ。一気に化学肥料の使用をやめれば、しわ寄せが出るのは明らかだった。

 それでも、スリランカのラジャパクサ大統領は、自国の政策を誇っていたという。農業現場に遠いところで政策が作られ、大コケしたわけで、農業者にとってはとんだ迷惑である。


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