韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による3日夜の「非常戒厳」の宣布と、4日朝の解除は、政治的混乱を引き起こした。国民の間には、不安、衝撃、混乱が広がった。
尹氏は3日夜のテレビ演説で、北朝鮮の共産主義勢力から国を守り、反国家勢力を排除するためだとして、軍による統制が必要だと訴えた。これに対し国会は素早く、非常戒厳の解除要求を議決した。
ソウル市民のラ・ジスさんは、3日の遅い時間に自宅近くでヘリコプターの音を聞いたという。大統領によるテレビ演説の直後には、BBCの取材に、「ミャンマーであったクーデターが韓国で起きているような感じだ。心配だ」と話した。
彼女の友人の警官は、緊急出動の命令を受けて署に駆けつけた。そのことで彼女は、事態が収拾のつかない方向に向かっているとの感覚が強まったという。
国民の間では、尹氏の急激な行動が、テレビ演説で説明されたような理由によるものではなく、政権を揺さぶっている一連の政治的な出来事への対応であることは、すぐに理解が広がった。
ある女性は匿名で、「政府に対する懸念や判断を表明するという、すべての人の自由と権利を制限しようとしている」と感じたと言い、こう続けた。
「韓国がもうひとつの北朝鮮になってしまうようで、とても怖い」
ソウルで暮らすキム・ミリムさんは、事態の深刻化を心配し、急いで非常用具をバッグに詰めたとBBCに話した。過去の戒厳令では逮捕や投獄があったことを思い起こしたという。
今回の政治的混乱の余波を懸念する人もいる。
アクセサリーを作っている中小企業のオーナー、ドン・ジュンカンさんは、「国のために尽くしているという人が、どうしてこんなにも軽率に、気まぐれな行動を取れるのか」とBBCに話した。
「自営業者の私のビジネスは大きなダメージを受けると思っている。彼の言葉だけで通貨は暴落した。(中略)材料の輸入に深刻な影響が出るだろう」
国会の前では3日夜、集まった抗議者たちが「戒厳令反対」、「独裁打倒」などと声を合わせた。
4日朝に尹氏が非常戒厳を解除すると表明すると、抗議者らは歓喜した。
大学生のジュエ・ホンさんは、今回の事態が展開する中で、家族や友人たちが「この状況を理解しようと必死にメッセージを送っていた」と説明。「全くの悪夢に放り込まれた」ような感じだったと話した。
彼女は、尹氏の最初の発表が明確さに欠けていことが、それを「いっそう悩ましい」ものにしたとし、こう述べた。
「人々は、街中に兵士たちがいて、主要地区では戦車が走っていると言っている」
「明日は学校があるのか、ウォンの価値下落や為替レートの上昇が経済にどう影響するのか、若い男性が徴兵されるのか、私も友人もわからない」
(英語記事 'It feels like a coup d'état' - martial law chaos sparks worry in South Korea)