2024年12月7日(土)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年2月15日

 これまで農林水産省は有機農業の推進にさほど力を入れてこなかった。それなのにいまや有機農業を2050年に農地面積の25%に拡大すると喧伝している。農水省が方針転換せざるを得なくなった理由の一つに、畜産の環境問題があると感じる。

有機農業と畜産業の意外な関係性

「ゴゴォー」

 日の出前の暗闇をふるわせて、ある集落に市道を走る4トントラックの轟音が伝わってくる。「また来たか」。住民は寝床で夢を破られたことに苛立ちながらこう思う。

 夜明け前から日中、夕方まで、多い日にはトラックが10往復近くし、辺りは「まるで建設現場」のような喧騒に包まれる。建設現場と違うのは、トラックの荷台に積まれているのが畜産施設から出る排せつ物であり、向かう先が農地だということだ。

堆肥の置き場になっている農地にはパワーショベルが置かれ、堆肥が数メートルの高さまで積みあがっていた。「家畜排せつ物処理法」で禁じる野積みに当たる可能性が高いが、現場を見た地元自治体はハエの発生防止に消毒するよう指導しただけだという

 集落を見下ろす山の中腹に、農業団地が広がっている。トラックはまっすぐ団地の中央部に向かい、山あいの1枚の畑に手早く荷台を空けると、再び畜産施設を目指して走り去る。

「あそこは糞捨て場じゃけん」

 住民はその農業団地のことをこう表現する。そこではキャベツやタマネギが作付けされていて、あろうことか食品大手に納入され、冷凍食品の原料に使われるのだ。

 なぜこんなことが起きているのか。排せつ物を運んでくるトラックには、畜産業者の名前が大書してある。この業者は急速な規模拡大を遂げ、所在する地域ブロックでその畜種の1割以上を飼育するまでに成長しているという。

 日々大量の排せつ物が発生するわけで、それをおがくずなどと混ぜて堆肥にし、農業法人の畑に運んでいくのだ。この農業団地を借りている農業法人は、100ヘクタール以上を耕作するメガファームであり、もともと「有機農業をしている」と称していた。有機農業は、基本的に化学的に合成された肥料や農薬を使わない。けれども、農業法人は農薬を散布し、その農薬の空き容器を畑の脇の焼却炉で燃やしているのを住民が目撃している。それでも有機と掲げたのは、畜産施設から出る家畜糞堆肥という有機質を大量に畑に施していたからだろう。

 「数年前まで植えたキャベツが葉の端の方から黄色く変色して、枯れて育たなくなっていた」と地域住民は語る。

 今はキャベツは育ってはいるものの、問題が解決したわけではない。住民は毎年、ハエの大発生に悩まされている。原因はどうやら、トラックの目的地である1枚の畑らしい。

 ここは四方を山林に囲まれており、住民が使う道路からは見ることができない。数年来、原因不明のハエの発生に悩まされた住民が2019年夏にここを見つけた。長らく作付けはされていない。


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