お花畑の農業論にモノ申す

2021年12月17日

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渡辺好明 (わたなべ・よしあき)

新潟食料農業大学学長

1945年生まれ。68年3月、東京教育大学文学部卒業し、同年4月に農林省入省。水産庁長官、農林水産事務次官、内閣総理大臣補佐官、東京穀物商品取引所理事長などを歴任。2018年4月に新設された新潟食料農業大学で学長に就任した。全国農地保有合理化協会会長も務める。

 「田は耕にあり」(耕者有其田)

 これは1911年に清朝を倒し中華民国を樹立した共和革命「辛亥革命」を率いた孫文のスローガンである。実際に耕作に従事する農業者に「農地に関する権利」(所有・利用)を与え、耕作をしない単なる地主から農地を取り返すというのである。

(porpeller/gettyimages)

耕地は耕作者に帰属するもの

 日本の「農地法」でも、第3条において、「農業経営に供すべき農地のすべてについて効率的に利用して耕作すると認められない場合」には、農地の利用権を取得できないとされている。農地は耕作者に帰属するという点で共通する。

 なお、「田」には、水田に限らず畠と畑を含む。畠は、いわゆる普通畑、常畠(じょうばた)を意味し、畑は、「焼き畑」のことである。日本の場合も、大宝律令以来、「五穀」(稲、麦、豆、黍、稗)を植える地をもって「田」としていた。(「田令」は金田章裕『景観からよむ日本の歴史』(岩波新書)を引用)。

 現在、農地といっても耕されていないものを広く「耕作放棄地」と称し、その大規模な存在が社会課題として語られ、この面積の減少が農業政策の大きな目標の一つのようにされている。しかし、この「耕作放棄地」という言葉の意味と実態を見ていくと、農業経営上ペイする形で復活・是正することは容易ではなく、また、現実的ではないだろう。実情をよく調査し、仕分けて対応することから、農業の未来を拓くことにつながるのだと考える。

「非・耕」と「不・耕」の農地の違い

 いわゆる農地と呼ばれるもののうち、耕作されていないものを、①耕作放棄地、②不作付地、③荒廃農地で再利用が可能なもの、④荒廃農地で再利用が不可能なものの4つのタイプに分類される。

 ①の耕作放棄地は、「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」のことを示す。この総面積を、「埼玉県や滋賀県の全面積に匹敵」などと表現され、問題提起されているが、あくまでも所者の意思に基づく「主観的な」数字である。

 ②の不作付地は、この1年作付けがなかったが、再開の意思があるものと言える。

 これに対し、③と④の荒廃農地は、「現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地」とされており、市町村、農業委員会などの形状判断に基づく「客観的な」数字となる。

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