2024年11月22日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年2月15日

農地を1メートル掘り下げ堆肥を入れる

 積まれた堆肥の一部は確かに、周辺の畑に投入されている。が、その前の段階、農地に野積みされている間に堆肥に含まれる窒素が硝酸性窒素に変化し、地下や周辺に流れ出し、地下水や河川を汚染するなどかなりの環境負荷を与えている可能性も否定できない。

 硝酸性窒素は、過剰に摂取するとメトヘモグロビン血症を引き起こすとされる。これはブルーベビー症候群とも言い、身体の組織に酸素が行き渡らなくなって、乳幼児の場合死に至ることもある。

 昨年12月に堆肥が野積みされた畑を訪れると、一面に堆肥が敷き詰められ、整地するために使っているらしいパワーショベルが放置されていた。隣り合う2枚の畑では、キャベツが大きく葉を広げていた。

キャベツ畑のすぐ先に積まれた堆肥とパワーショベルが見える

 堆肥の積まれた畑は、2枚のキャベツ畑より若干高い位置にある。間にコンクリートで簡単に舗装された車1台が通行できる道路があるとはいえ、雨が降れば堆肥の山から流れ出す泥水が下の畑までしみ込んでしまうだろう。

 その何が問題かといえば、家畜排せつ物を使った堆肥は衛生管理を誤ると、農作物に病原菌を付着させる可能性もあるということだ。発酵が不十分で未熟な堆肥は、農作物に大腸菌を付着させるリスクがあり、腸管出血性大腸菌(O157)の感染経路の一つと推定されている。そのため、堆肥の保管場所は農地や水路から離す必要がある。

 しかし、この現場はそんなことが考慮されているとは思えないのである。

 作付け前の畑への堆肥の投入量は、凄まじい。借りた農地で初めて作付けをする際は、やせた農地が多いため10アール当たり50トンを投入するという。作付け前の堆肥の投入量はふつう、10アール当たり2、3トン、多くて5トン程度だ。

 農業法人の役員に堆肥をどの程度入れるのが理想かと聞くと「100トン」と即答された。しかも、キャベツの根が30センチは伸びるから、1メートルの深さまで堆肥を入れる必要があるという。

 「10アール当たり100トン入れても、1メートルなんか絶対行かないですよ。この粘土質の土壌を改良しようと思ったら、僕のイメージで言ったら、半々入れないといけないですよ。1メートルの半々っていうことは、どういうことですか。100トンじゃ、きかんところもあります」(役員)

 ここで半々と言っているのは、土と堆肥を半々にするという意味だ。実際、団地内の畑を1メートルほどパワーショベルで掘り下げ、大量の堆肥を投入する様子を住民が目撃しているし、役員も1メートル掘り下げて堆肥を入れることもあると語っている。農業の常識に照らすと、これはもはや排せつ物の埋設処分なのだが、あくまで土壌改良だというのだ。


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