2024年12月22日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2021年12月23日

 「富山県と同じくらいの面積の耕作放棄地」

 これは、メディアが耕作放棄地について取り上げる際の決まり文句だ。全国で農地の荒廃が進み大変だと言いたいようだが、実のところ耕作放棄地の問題には、国による自作自演の面もある。戦後一貫して農地の造成を続けてきたからだ。

(Ольга Симонова/gettyimages)

61年で113万ヘクタール農地を造成

 耕作放棄地は2015年時点で約42万3000㌶あり、富山県と同じくらいの面積になる。現在はもっと増えているはずだが、国が5年ごとの農林業センサスで、20年から耕作放棄地を調査対象から外したため、把握できなくなってしまった。耕作放棄地は病虫害や鳥獣害の温床になり得るので、増加は望ましくないとはいえ、致し方ないところがある。

 中山間地を訪れて周囲を見渡せば、目に入ってくる山の多くが元は農地だったりする。スギやヒノキの林になっている斜面に分け入ると、かつて棚田があった痕跡の石垣が残っている。何十年も前に耕作放棄されたこれらの棚田を、復旧させなければと思う人がいるだろうか。

 全国で増え続ける耕作放棄地の中には、もはや耕作する必要性のないもの、そもそも開墾された当初から必要性の薄かったものが少なからず混じっている。現に、今に至るまで農地の造成はずっと続いている。20年に新たに拡張された耕地面積は0.8万㌶、21年は0.7万㌶だ。0.7万㌶は、東京ドームおよそ1500個分に当たる。


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