2022年12月2日(金)

お花畑の農業論にモノ申す

2021年12月23日

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 国は戦後の食糧難を受けて農地の造成を進め、ピークだった1971年に拡張した面積は5万6000㌶に達した。その実、すでに食料生産は過剰基調に陥っていて、コメの生産量を調整する減反政策も同時期に始まっている。が、水田の拡張こそ止まったものの、畑の造成は続いた。事業の計画が立てられたころと社会情勢が大きく変わったにもかかわらず、干拓や浅海開発、山を切り拓いての造成などを行う国営農地開発事業は、継続された。

 1961~2021年に造成された農地は、113万㌶にのぼる。これは、現在の耕作放棄地の面積の3倍近い。耕作放棄地の増加に国の農地開発が拍車をかけたのは、間違いない。

国の造成農地が数年で耕作放棄地に

 農地開発事業で生まれた農地には、セイタカアワダチソウはじめ雑草を生い茂らせているところが珍しくない。とりあえず農地を作ったものの、ほとんど耕作されないまま耕作放棄地になっている。

 そもそも作る必要のなかった農地が耕作放棄されたに過ぎないのに、国から耕作放棄地の解消を求められ、頭を抱えている自治体すらある。農地開発の費用対効果の悪さは、会計検査院や総務省などが指摘してきた。

 中には、造成後に転用され、農地でなくなったところまである。造成直後の土地は基本的にやせていて、すぐに作物が育つ状態ではなく、入植者は土づくりから始めなければならない。いつになったら収益が得られるか分からない土地を耕作するより、手っ取り早く農地転用で荒稼ぎしたいと考える人間がいても、責めることはできないだろう。

 なお、国が造成した農地は、特に良好な営農条件を備えていると見なされる。そのため、私的に転用する、つまり家を建てたり、商業施設を建てたりすることはできない。転用できるのは、公共事業つまり、道路や公園といった公共施設を整備する場合だ。勢い地元の有力者を巻き込み、公共事業誘致のための政治工作が始まったりして「農地を農地として使う」という本来の目的はうっちゃられる。

「食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮を図っていくためには、今後とも国内農業の基盤である農地を確保していく必要(がある)」

 農水省は、耕作放棄地の発生を防止すべき理由をこう説明している(「荒廃農地の現状と対策 令和3年11月」より)。が、早晩耕作されなくなる農地を作り続け、〝耕作放棄地問題〟を膨らませたのは、農水省自身にほかならない。

農業者が負担しない農地整備に多額の予算

 数億から数百億円という巨費を投じる農地開発は、作った農地が役に立たなくても、土建業が潤うため、地元からの要望が強い。さすがに農地の造成は減っているものの、土木工事を伴う農地の整備には、今も多額の予算が付く。たとえば2022年度の「農地整備関係予算等」の概算要求額は、1608億8000万円だ。

 このうち「農地中間管理機構関連農地整備事業」は、細切れな農地をまとめて広くする区画整理だけでなく、農用地造成も対象にしている。予算額は680億4500万円。整備されていない農地は借り手が見つからないから、農地中間管理機構が借り入れている農地を、農業者の費用負担なしに基盤整備するという。

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