2024年6月18日(火)

お花畑の農業論にモノ申す

2022年2月15日

 ただ実際は、有機農業を広めれば問題が解決するほど単純ではない。畜産の集約により、下の地図の通り、特定の地域で家畜排せつ物が多く発生している。

「畜産環境をめぐる情勢 令和3年6月」(農水省)より

 特に色の濃い地域で、家畜排せつ物を耕畜連携、つまり畑作や稲作の農家に使ってもらって循環させることは、難度が上がっている。色の薄い地域は問題ないかといえば、たとえば北海道には酪農が盛んで畑作はさほどでもない地域もあるので、そうではない。

 課題を解決する夢の技術であるかのように語られがちなのが、再生可能エネルギーのバイオガス発電だ。しかし、糞尿をメタン発酵させてメタンガスをエネルギーにするこの技術にしても、やはり発電後には残渣(ざんさ)が生じ、その処理に苦慮する地域が多い。

戦略を絵に描いた餅にしないためには

 畜産側から堆肥の活用を望まれている有機農業にしても、その割合は耕地面積の0.5%(18年)に過ぎないし、堆肥の施用は適量に留めないとかえって環境負荷になるうえ、作物に病害が出やすくなる。

 加えて畜産業者からすると、排せつ物はできるだけ早く手放したいものであり、いきおい発酵が不十分な未熟堆肥を農家に引き渡すことになる。そうなるとなおさら、養分過多や病害、悪臭、ハエの発生など問題を引き起こす。有機農家のほしいものと、畜産業者の使ってほしいものは異なるのだ。この矛盾を解決できなければ、みどり戦略は絵に描いた餅になるならまだ良い方で、農地を排せつ物の最終処分場にする後押しをしかねない。

 みどり戦略は農水省の22年度予算案の柱であり、関連予算は約70億円。「堆肥の利用促進・土づくり」が有機農業推進のために重要だと見なされていて、これを含む「みどりの食料システム戦略推進総合対策」には21年度補正予算と22年度予算を合わせて計35億円超が計上されている。冒頭で紹介した農業団地のように、どのくらいの堆肥の投入に農地や環境、周辺住民が耐えられるか実証するのだけは避けなければならない。

   
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