2022年10月5日(水)

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2022年1月21日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

2年ぶりの開催となった「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2022」。かつては家電の見本市だったCESも、電気自動車(EV)に代表されるように、自動車が電動化していくなかで、主役の座を占めつつある。今回のCESを取材した、ロサンゼルス在住のジャーナリスト・土方細秩子氏に、自動車(EVとGM)、フードテック、人工知能(AI)の4つをピックアップしてリポートしていただく。

 今回CESでは初めて「フードテック」というコーナーが登場した。人工の肉やその他の食材がそれだけ大きな注目を集め、CES開催時期にはケンタッキー・フライドチキン(KFC)が人工肉のフライドチキンを1月10日から全米で期間限定で発売することを発表して話題にもなった。人工肉チキンが全国チェーンで展開されるのが初めてのことだ。

「ビヨンド・フライドチキン」、10日マンハッタンのKFC(Newscom/aflo)

ケンタッキーの「ビヨンド・フライドチキン」

 製造を担当するのはビヨンドミート社で、この製品は「ビヨンド・フライドチキン」の名前で提供される。1月5日、CES会場で行われた発表でKFCアメリカの社長、ケビン・ホックマン氏は「最初からわれわれのミッションはシンプルだった。世界的に有名なケンタッキー・フライドチキンを植物ベースで作ること。そして最初の試みから2年たった今、われわれはミッションが果たされた、と報告できる」と語った。

 これまでビヨンドミート、インポッシブルミートなどの人工肉の製造会社は主に牛肉に似た植物由来の「肉」を作り、マクドナルドなどのハンバーガーチェーンで販売されている。インポッシブルミート社が豚肉にも乗り出し、過去のCESでトンカツなどのメニューを提供したこともあった。しかしチキンに関しては今回のビヨンドミートが初となる。

 この他、動物油脂を使わないアイスクリームやチーズなどの乳製品など、今回のCESではさまざまなフードテックが披露されると同時に、自動配膳ロボット、自動調理ロボットなどあらゆる食品関連の最新技術を見ることが可能だった。

人口爆発と環境問題

 ではなぜこうしたフード関連の技術が今注目されているのか。世界の人口は2050年には90億人に達する、と言われる。それを養うだけの食料資源は枯渇しかけている。世界的に農業離れ、農業人口の高齢化、農地縮小などが進んでおり、人口が増え続けると深刻な食糧危機が起こりかねない。特に食肉は発展途上国での需要が増え、国同士の奪い合いが起こる可能性もある。人工肉はこうした問題に対応する一つの答えとなる。

 もう一つはやはり環境問題だ。畜産による家畜が吐き出すメタンの量は世界全体の排出量の2割にも及ぶ、という指摘がある。SDGs(持続可能な開発目標)という観点からも植物由来の人工肉に切り替えて行かないと、脱炭素の問題に対応しにくい。家畜が消費する莫大な穀物も食糧危機が起これば問題となるだろう。

 フードテックだけではなく、こうした問題に取り組む農業技術、つまりアグリテックも同様に注目されている。元々農業とテクノロジーは親和性が高く、米農業機器大手のジョン・ディア社が今年のCESで記者会見を開き話題となったが、そこで同社は「農業の現場はシリコンバレーと同様にさまざまなテクノロジーが導入された、もっとも先端的な場所のひとつだ」と語った。

 農業では以前からドローンによる散水や農薬散布、作物の育成状況のカメラによるチェック、コンピュータ管理された温度や湿度の管理、など様々なテクノロジーを導入している。今ジョン・ディアを始め多くのアグリテック企業が取り組んでいるのが耕作機械などの電気自動車(EV)化、自動運転化、AIを用いたデータ管理などだ。

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