2年ぶりの開催となった「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2022」。かつては家電の見本市だったCESも、電気自動車(EV)に代表されるように、自動車が電動化していくなかで、主役の座を占めつつある。今回のCESを取材した、ロサンゼルス在住のジャーナリスト・土方細秩子氏に、自動車(EVとGM)、フードテック、人工知能(AI)の4つをピックアップしてリポートしていただく。
今年のCESでGMのメアリー・バッラ会長が基調演説を行った。これは昨年に続けて2年連続、また同社は2016年にもCESで「シボレー・ボルトEV」をデビューさせている。
今回GMが発表したのは、
「2040年までに企業全体をカーボンニュートラルにすること」
「そのために2025年までに30の電気自動車(EV)モデルを発表すること」
「2035年までにライト及びヘビーデューティートラックをEV化すること」
「米国内の工場の電力供給を2025年までにすべて再生可能エネルギーに、世界でも2035年までに同様の目標を達成する」
などだ。新しいEVとしては「シルバラード・ピックアップトラック」、「エキノックスクーペ」などのモデルが発表された。しかし、話題をさらう新機軸かと言われると必ずしもそうではない。
GMが2016年に「シボレー・ボルトEV」を発表した時、「テスラキラー」という言葉が使われた。当時テスラは「モデルS」や「X」と比べて廉価版となる「モデル3」の発売を控えており、政府インセンティブなどを加えた価格を3万5000ドル、としていた。ボルトは「モデル3よりも安く、早く市場に出す」と発表され、実際にそのとおりになった。ところが販売実績には大きな差が出た。
なぜ、「シボレー・ボルトEV」は売れなかったのか?
昨年上半期の数字ではあるが、米国で最も売れたEVは「テスラモデルY」(8万1802台)、続いて「テスラモデル3」(5万6755台)、3位に「シボレー・ボルト」(2万141台)という結果だった。しかも下半期になると、昨年GMがやはりCESで大々的に発表した韓国LGソリューションズとの電池で提携した後、ボルトの発火事故が数件おき、ボルトは生産停止状態に陥ってしまった。
もちろん、その間にGMとしても「ハマー」のEVバージョンを出し人気を集めたし、「キャデラック」からは「リリック」というEVモデルも発表している。しかし、「ハマー」はいわゆるニッチ市場を狙った車で爆発的な売れ行きを見込めるものではない。また「リリック」の発売に際し、GMは全米のキャデラック・ディーラーにEV充電施設を含めた大々的な改装を求めたが、これがコストのかかるものだったことから全体の17%がキャデラック・ディーラーから離脱する、という報道もあった。