2024年12月31日(火)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2023年4月26日

 山室真澄東京大学教授らは「ネオニコチノイド系殺虫剤は水生食物連鎖を破壊して漁獲量を減らす」と題する論文を2019年11月に Science誌に発表し、国立研究開発法人産業技術総合研究所はその内容をホームページで紹介している 。そこには「島根県の宍道湖を対象とした調査により、水田などで利用されるネオニコチノイド系殺虫剤が、ウナギやワカサギの餌となる生物を殺傷することで、間接的にウナギやワカサギを激減させていた可能性を指摘した」と書かれている。

(GugaFerri/aetb/gettyimages)

論文を宣伝したメディア

 ネオニコチノイド系農薬(以下、ネオニコ)は現在7種類が流通している。そして、日本では発生していないが、欧米で問題になっているミツバチ大量死の一因として疑われている。

 そのネオニコがウナギやワカサギを間接的に殺すだけでなく、人間に対する危険まで警告したのがTBSテレビ「報道特集」だった。2021年11月に「最も使われている殺虫剤ネオニコ系農薬・人への影響は」という番組を放映し、これを制作したディレクターはその後ネオニコを題材にしたドキュメンタリー映画『サステナ・ファーム トキと1%』を公開した。山室教授もまた単行本『魚はなぜ減った?見えない真犯人を追う―東大教授が世界に示した衝撃のエビデンス』(つり人社)を出版している。

 ところがこの論文を元米国食品医薬品局(FDA)のヘンリー・ミラー氏晴川雨読氏農薬工業会、そしてFoocom.netの斎藤勲氏などが厳しく批判した。とくにミラー氏は「私は40年以上Science誌を読んでいるが、山室論文はおそらくこれまでに遭遇したなかで最悪で最も無責任な論文」とまで酷評しているのだ。


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