2022年10月3日(月)

食の安全 常識・非常識

2022年8月14日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤、リスクコミュニケーション担当)。(記事の内容は、所属する組織の見解を示すものではなく、ジャーナリスト個人としての意見に基づきます)

 ここまで、除草剤グリホサート殺虫剤ネオニコチノイドについて解説してきました。しかし、その科学がどうであれ、農薬に対して不安を持つ人が多いのはたしかです。そこで、日本では昨年度、すべての農薬について定期的に最新の科学的知見に基づいて安全性などの評価を行う「再評価制度」の仕組みが導入されました。

(South_agency/gettyimages)

 農薬は国の審査を受けたうえで登録され、製造や販売・使用が始まります。今後は、新規登録から原則として15年ごとに再評価が行われます。また、すでに登録されている農薬については、2021年度から再評価がはじまりました。500成分以上ある農薬を順次、評価してゆかねばならず、優先度が高い農薬として、グリホサートやネオニコからはじまります。

 新しい再評価の仕組みを解説します。

農薬は、企業が申請し国が審査している

 「農薬登録制度」は現在、図1に示すように、各省庁が分担して新規の農薬について評価(審査)し、安全性が確認されたものが登録される仕組みとなっています。

(出典)食品安全委員会「農薬の安全の確保について」 写真を拡大

 昨年度に導入された「再評価」は、こうして登録された農薬を原則として15年ごとに、新たな科学的知見をもとに評価し、安全が確認されなければ登録取り消しとなります。再評価の結果、使用方法が変わったり、というケースもあるでしょう。再評価期間中もその農薬は使え、結論が出てから猶予期間を経て管理の方法が変わるので、農家に不都合は生じません。

これまでも、毒性の高い農薬は消えていったが……

 「再評価が始まる」というと、「今まで、一度の審査後は野放しだったのか?」と尋ねられるのですが、それは違います。これまでは、3年ごとの登録更新制度がとられていました。

 農薬の審査は農薬取締法に基づき次第に厳しくなり、求められる試験数も増えています。1971年には登録に必要な試験数はわずか10。ところが、現在は92試験にまで増えています。そのため、追加された試験については、登録更新時にメーカーからデータが提出されていました。

 国は、データで問題がないことが確認できれば、登録を更新します。追加試験で問題が生じた農薬は、メーカー自身が登録更新を断念します。また、試験にはコストがかかりますので、儲からない農薬は試験されないまま終売となることもあります。こうして、農薬は大きく変化し、安全性も向上してきました。

 1950年代、60年代には毒性が強いために社会問題化して禁止となった農薬もありました。昔は、毒物及び劇物取締法(毒劇法)で「特定毒物」や「毒物」に該当する強い毒性を持つ農薬が普通に使われていたのです。

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