2026年7月27日(月)

スポーツ名著から読む現代史

2026年7月27日

 第108回全国高校野球選手権の地方大会は大詰めを迎え、全国各地から甲子園出場を決めた学校が相次いでいる。この時期になると思い返すのが夢の甲子園まであと1勝と迫りながら監督の指示で登板機会を奪われた、あの怪物投手のことである。現在、大リーグ・ドジャースに所属する佐々木朗希投手だ。

今年も甲子園出場をかけて熱戦が繰り広げられている(スポーツ報知/アフロ )

 7年前、岩手県立大船渡高校時代に、同じ岩手の先輩、花巻東高時代の大谷翔平を上回る160キロ台の剛速球をマークし、一躍全国の注目を集めた。第101回選手権の岩手県大会ではエースとして決勝まで駒を進めながら、故障を心配した監督の判断で決勝戦の登板を回避。エースを欠いたチームは大敗、甲子園出場を逃した。佐々木を使わなかった監督の采配を巡って賛否両論が沸き起こった。

 監督の判断は正しかったのか。今も論争となる球史に残る出来事だが、当時から高校野球を熱心に取材していたスポーツライターの目に、事態はどう映っていたのか。今回紹介するのは騒動が起きた2019年の秋に出版された『投げない怪物』(小学館刊)である。サブタイトルは「佐々木朗希と高校野球の新時代」。

 著者の柳川悠二氏は、佐々木の騒動は「時代の転換点」だったと説く。令和の年号が始まった年の騒動を契機に、一人の「怪物」を酷使して頂点を目指す従来の戦法に強い批判の目が集まった。投球数の管理が強まり、複数の投手を用意して大会に臨むことが新たな常識となった。

 昭和から平成にかけて野球ファンから支持され続けた「先発・完投型」のエース像は姿を消し、複数投手による継投が甲子園を勝ち抜く秘訣となり、「エースと心中」といったパターンは「死語」と化したという。高校野球界に起きている地殻変動を同書から読み取ってみたい。


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