2025年12月5日(金)

勝負の分かれ目

2025年8月19日

 高校野球の日本一を決める「夏の甲子園大会」は近年、猛暑対策が大きなテーマとなっている。今年は高校球児や観客を熱中症から守るため、気温が上がる日中を避けて「午前」と「夕方」に分けて試合を行う「朝夕2部制」を、昨年の3日間から5日間(当初は6日間の予定が天候による順延で1日短縮)へ拡大させた。

(bee32/gettyimages)

 昨年より気温が低かったこともあり、観客の救護室の受診者数は大幅に減少。一方で、試合終了時間が遅くなり、悪天候による一時中断の判断が難しくなる弱点も露呈した。

 “小手先”の猛暑対策で過密日程を消化する「夏の甲子園」は、はたして時代に即しているのか。猛暑が厳しさを増す中、5年後、10年後の夏を見据えたとき、抜本的な大会の見直しも念頭に突っ込んだ議論を深める時期が差し迫っている。

雨に弱い「朝夕2部制」

 今大会の2部制が実施された開幕からの5日間で、熱中症の疑いは15試合で8件と、昨年の第5日終了時点と比べて12件の減少となった。観客の救護室受診も49件(うち熱中症の疑いは19件)で、昨年の130件(同71件)から大幅に減った。

 野球専門サイト「Full-Count(フルカウント)は、グラウンド上で足をつる選手が続出した第2日も、観客の救護室受診は11人、熱中症疑いも8人にとどまり、救護室の医師から「きょうは2部制の効果だった」との声が上がったと報じた。2部制に一定の成果がみられたといえる半面、第1~第5日の平均気温は30・3度で、昨年より2度低かったことも味方につけた。

 甲子園大会を巡っては近年、様々な猛暑対策が取られてきた。日本高校野球連盟(高野連)とともに主催する朝日新聞は、今年の開幕日の朝刊1面で、「大会本部は安全対策や暑さ対策に万全を期します」と表明。大会では、2023年から5回終了時の水分補給や身体冷却のための「クーリングタイム」を導入し、今年からは試合前のノック時間を短縮し、実施の有無も選択できるようになった。すでに球児たちが導入している熱を反射する白色シューズの着用が審判にも広がった。

 しかし、夏場の集中開催にこだわる以上、猛暑の時期に直面するという抜本的な課題は避けられない。主催者側が限られた日程の中で必死に工夫を凝らす中、今大会では新たな課題も浮上した。


新着記事

»もっと見る